AIはすでに私たちの生活に深く入り込み、便利な道具としてだけではなく、心の隙間を埋める「相手」としての存在感を増しつつあります。アメリカで実施された最新の調査では、40歳未満の若者の約4人に1人が「AIとの恋愛関係」を受け入れられると答えました。さらに、10%以上が「AIを友達にしたいaiと考えていることも明らかになっています。

この結果は単なる数字以上の意味を持っています。インターネットとともに育ったZ世代やミレニアル世代にとって、AIは日常に自然に溶け込む存在になりつつあり、そこには新しい人間関係の可能性と課題が同時に広がっているのです。


AIは「友達」になれるのか?

今回の調査によると、すでに1%の若者はAIを友達として持っていると回答し、11%は「AIの友達を持ちたい」と積極的に肯定しています。反対派が57%とまだ多数を占めるものの、3割以上は「まだ決めかねている」と曖昧な態度を取っており、この層が今後のAIとの関わり方をどう選ぶかで大きな変化が訪れる可能性があります。

興味深いのは性別による違いです。男性の13%がAIとの友情に前向きであるのに対し、女性は9%にとどまっています。また、政治的傾向でも差があり、自由派の14%がAIとの友情を受け入れる一方で、保守派は9%にとどまりました。

さらに、インターネット使用時間も態度に直結しています。1日6時間以上をオンラインで過ごす若者の16%がAIを友人として受け入れるのに対し、利用時間が少ない層では9%に減少し、逆に拒否感が強まるのです。ネットに深く関わるほどAIに親近感を抱きやすいという傾向は、非常に示唆的といえるでしょう。


恋人としてのAI──「現実の恋愛」を置き換える可能性は?

友情を超えて、AIが恋愛関係にまで入り込む可能性はあるのでしょうか。調査の答えは意外と明確です。7%の未婚・非同居の若者は「AI恋人を受け入れる」と回答しました。小さな割合に見えますが、絶対数にすればかなりの人数です。一方で、71%が「不快または反対」と明言しており、まだ大多数は現実の恋愛を支持しています。

ここでも世代差が浮き彫りになります。Z世代の74%がAI恋愛を否定的に捉えたのに対し、ミレニアル世代では67%にとどまります。興味深いことに、AI恋人を受け入れる割合自体は両世代でほぼ同じ(7〜8%)ですが、ミレニアル世代のほうが揺れ動いている印象です。

教育や収入も影響しています。大学教育を受けた若者の76%がAI恋愛に反対し、年収10万ドル以上の層では80%以上が否定的です。逆に、収入が低い層や学歴が高くない層では拒否感がやや和らぎます。つまり、社会的地位の高さとともに「AI恋愛を避ける傾向」が強まるのです。

さらに性別で見ると、28%の男性が「AIが恋愛を置き換える可能性がある」と考えているのに対し、女性は22%にとどまります。やはり男性のほうがAI親密関係への許容度が高いのです。


AIとの対話が生む新しい「心の居場所」

調査の背景には、生成AIとの会話が日常化している現実があります。ChatGPTなどのログ分析によれば、創作に次いで人気のある利用目的は「ロールプレイ」と呼ばれる感情的なやり取りです。

その象徴的な事例が、Character.AIに登場する「Psychologist」と呼ばれるAI心理セラピストです。登場以来、このAIは9,500万件以上のメッセージを受け取り、多くのユーザーが「本当に心の支えになっている」と語っています。

人間関係において「聞いてくれる存在」がいかに大切かを考えれば、AIが担うこの役割は決して小さくありません。AIは単なる道具ではなく、日常の対話相手や精神的な拠り所に変わりつつあるのです。


若者が抱えるAIへの「興奮」と「不安」

ただし、この変化に対する感情は一枚岩ではありません。調査では、55%がAIを「脅威」や「不安要素」として捉えているのに対し、45%は「ワクワクするもの」と感じていることが明らかになりました。

ここでも性別や思想が影響します。女性は男性よりも慎重で、28%がAIを脅威と答えたのに対し、男性は23%。逆に「AIに興奮を覚える」と答えたのは男性の20%に対し、女性は11%にとどまります。また、保守派は自由派に比べてAIをより警戒しがちで、低収入や低学歴層ほど不安を抱きやすい傾向が出ています。

このように、AIをめぐる感情は「期待」と「恐怖」が拮抗しており、それが社会全体の議論をより複雑にしています。


人間関係の未来──人とAIの共存はどこへ向かうのか

今回の調査結果から見えてくるのは、「人と人」だけが築く世界から「人とAI」が共に関わる世界への移行が始まっているということです。

まだ大多数はAIとの友情や恋愛に否定的ですが、すでに11%が「AI友達を持ちたい」と答え、25%が「AI恋愛を受け入れる」と認識しているという事実は重い意味を持ちます。数字の小さな変化がやがて大きな文化的転換につながる可能性があるのです。

私たちはこれから、AIをどこまで「自分にとっての誰か」として認めるのか。AIが人間関係の一部を補完し、あるいは置き換える未来をどう受け入れるのか。テクノロジーの進歩だけでなく、私たち自身の価値観が試される時代に入ったといえるでしょう。