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埼玉県写真サロンの最優秀賞取り消し:「AI画像」疑惑の実際と、写真コンテストのその後
カエルの頭にトンボがとまった一枚が、最優秀賞を取り消されました。「AIが暴いた」とされたこの件で、主催者が実際に何を理由にし、その後どう対応したのかを公式の告知から確かめ直しました。

2025年11月、埼玉県の写真コンテストで最優秀賞が取り消されました。SNSでは「AIで作った画像ではないか」と話題になり、Modern-Gも11月13日に「AIが暴いた」としてこの件を取り上げています。
2026年10月29日に主催者の告知と報道を読み直すと、取り消しの理由はAIではありませんでした。主催者が示した理由は、受賞者が「自身が制作していない作品を応募した」と説明したことで、AIが使われたかどうかは確認されていません。この記事では経過を整理し直し、主催者のその後の対応と、写真コンテストのルールや技術の動きをまとめます。
何が起きたのか
舞台は、全日本写真連盟埼玉県本部と朝日新聞社が主催した「第42回埼玉県写真サロン」(2025年)です。誰でも応募できるコンテストで、319人から計743点(単写真679点、組写真64点)の応募がありました。旧記事は「743点の応募作」と書いていましたが、743は人数ではなく作品の数です。
最優秀賞に選ばれたのは、カエルの頭にトンボがとまった瞬間を写したとされる「俺の頭だぞ!」でした。ITmedia NEWS(2025年11月12日)によると、選評は撮影技術と構成の巧みさを評価しており、作品は9月に埼玉県立近代美術館で展示され、朝日新聞の埼玉版にも2度掲載されています。
同じ記事によると、X上では11月7日ごろから「著作権フリーの生成AI画像に見える」といった声が上がり、米国のストックフォトサイトに受賞作とよく似たカエルとトンボの画像があると話題になりました。旧記事の「海外のAI画像サイトに似た構図があった」は、この点で正確ではありません。その画像がAIで作られたものかどうかも、確かめられていません。
主催者は何を理由に取り消したのか
主催者の告知は次のとおりです。
授賞後に外部からの指摘を受けて確認したところ、受賞者から「自身が制作していない作品を応募した」との説明がありました。主催者としてお詫びします。
ITmediaによると、取り消しは11月9日です。主催者は、選考の過程で画像検索などの確認をしていなかったとも説明しています。
つまり、取り消しの根拠は「本人が撮った写真ではない」という一点で、AIかどうかではありません。旧記事は、主催者が「AI生成と断定できない」としながら「非オリジナル」を理由に取り消した、という構図で論じていました。結論の向きは近いものの、そもそもAIの疑いは主催者の判断材料として示されていません。
旧記事が引用した「主催者として深くお詫び申し上げます。今後はAI生成画像への対応策を検討してまいります。」という謝罪文は、主催者のページの文面と一致しませんでした。朝日新聞の記事は確認できなかったため、この記事では使っていません。
その後の動き(2026年10月時点)
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2025年11月9日 | 最優秀賞の授賞を取り消し(ITmedia) |
| 2025年12月1日 | 全日本写真連盟が、同じ会員の過去の3作品の授賞も取り消し、連盟から除名 |
| 2026年5月19日 | 第43回埼玉県写真サロン(全日本写真連盟100周年記念)の応募要項を掲載(県本部サイトの新着情報) |
| 2026年8月30日 | 第43回の入賞作品を掲載。応募は308人・733点 |
もっとも大きな続報は、12月1日の追加処分です。全日本写真連盟は、この会員が過去に入賞した3作品(埼玉県写真サロンの第41回・第40回の準特選と、2017年の支部対抗戦の風景部門20位)についても、本人が制作・撮影していない作品を応募していたと認定して授賞を取り消し、連盟から除名しました。
連盟はあわせて「関係者のみなさまに深くおわび申しあげます」と謝罪し、再発防止策として次の3点を挙げています。
- 応募規定に「自身の作品に限る」ことを明記する
- 審査のときに検索ツールで類似画像を確認する
- 著作権講座などで会員の著作権への理解を深める
ルールの面では、注意しておきたい点があります。全日本写真連盟と朝日新聞社の全国規模の公募「全日本写真展2024」の募集要項は、2024年の時点ですでに「画像生成AIによって生成された画像は応募不可」としていました。問題が指摘されたのは、この地域のコンテストの規定でした。
2026年の全国規模の公募である第87回国際写真サロンの規定は、作品を「応募者本人が撮影し、著作権を有するオリジナル作品」に限り、画像生成AIの画像を受け付けないとしています。必要に応じて入賞データや元データの提出を求め、応じない場合は入賞を取り消すこともあると書いています。第43回埼玉県写真サロンの要項でどの条項が加わったかは、要項を開けず確認できませんでした。
海外の前例と、撮影の来歴を残す技術
写真コンテストとAIをめぐっては、2023年に有名な前例があります。英BBC(2023年4月18日)によると、ドイツの作家ボリス・エルダグセン氏は、ソニーワールドフォトグラフィーアワードのクリエイティブ部門で受賞した作品がAIで作ったものだと自ら明かし、受賞を辞退しました。議論を起こすための行動だったと本人は説明しています。
埼玉の件とは性格が違います。エルダグセン氏は自分でAIの利用を公表しましたが、埼玉の件は他人の画像を自分の作品として応募したと認定されたものです。AIの問題というより、作品の出どころと誠実さの問題でした。
出どころを確かめる技術としては、撮影した機器や編集の履歴を画像に記録する「コンテンツクレデンシャル」(業界団体C2PAの規格)があります。Adobeなどが参加するContent Authenticity Initiativeは2023年10月26日、ライカの「M11-P」を、この機能を内蔵した世界初のカメラとして紹介しました。
こうした記録があれば、本人が撮った写真であることを示しやすくなります。ただし、コンテストの応募作の確認にどこまで使われているかを示す資料は、今回は見つけられませんでした。
この件から考えたいこと
ここからは編集部の見方です。旧記事はこの件を「AIが変えた創作の定義」という大きな問いとして論じましたが、確かめてみると、問われたのはもっと基本的なこと、つまり応募した写真を本人が撮ったかどうかでした。AIの画像も、他人のストック写真も、その点では同じ扱いになります。
主催者の再発防止策も、AIの検出より、「本人の作品に限る」というルールの明記と類似画像の確認が中心です。画像生成AIが身近になった今、写真コンテストに求められているのは、高度な判定技術よりも、元データの提出などで撮影者であることを確かめられる仕組みなのかもしれません。
AIと作品の境界については、AIの絵だと言われた瞬間に見方が変わることを書いたエッセイでも取り上げています。権利をめぐる争いはディズニーとユニバーサルによるMidjourneyの提訴も参考になります。
Sources
- 全日本写真連盟埼玉県本部「第42回埼玉県写真サロン入賞作品」(2025年、取り消しと追加処分の告知を含む) (2026-10-29確認)(新しいタブで開きます)
- 全日本写真連盟埼玉県本部「第43回埼玉県写真サロン入賞作品」(2026年) (2026-10-29確認)(新しいタブで開きます)
- 全日本写真連盟埼玉県本部 トップページ(新着情報) (2026-10-29確認)(新しいタブで開きます)
- ITmedia NEWS「朝日新聞主催のフォトコンで不正により最優秀賞を取り消された写真連盟関係者、過去の受賞作にも“ストックフォト疑惑” 「現在、調査中」と主催者」2025-11-12 (2026-10-29確認)(新しいタブで開きます)
- 全日本写真連盟「第87回国際写真サロン [募集]」2026年 (2026-10-29確認)(新しいタブで開きます)
- 登竜門「全日本写真展 2024」(募集要項の転載) (2026-10-29確認)(新しいタブで開きます)
- BBC「Sony World Photography Award 2023: Winner refuses award after revealing AI creation」2023-04-18 (2026-10-29確認)(新しいタブで開きます)
- Content Authenticity Initiative「Leica Launches World's First Camera with Content Credentials」2023-10-26 (2026-10-29確認)(新しいタブで開きます)
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