目が覚めたような衝撃でした。
まるで古い友人が突然、昔の会話をすべて覚えていたかのように、何気ない一言から全てが繋がり始める。
──これが、今朝私がChatGPTの新機能を初めて試したときの感覚でした。
OpenAIがリリースした今回のアップデート。表面的には「新しい記憶機能の追加」と聞こえるかもしれませんが、その真の意味を理解したとき、私はAIとの未来が確かに変わったと確信しました。
記憶するAI、それは「道具」から「相棒」への進化
これまでのChatGPTは、どれほど会話が盛り上がろうと、一度ウィンドウを閉じればリセットされる「一回限りの出会い」のような存在でした。
たとえ前回の対話で大切な相談をしても、次に開いたときには「はじめまして」と返される。
しかし今、ChatGPTは過去のすべてのチャット履歴を参照できるようになったのです。
つまり、これからのAIは、あなたがどんな話をしてきたか、どんな悩みを抱えてきたか、さらにはどんなユーモアに笑ったかまでもを覚えてくれる。
「ユーザーの文脈を理解し、個性に寄り添ったアシスタント」としての進化が、ついに始まりました。
「記憶」の中身は?どう動作するの?
今回のアップデートで導入されたのは、「記憶機能の強化」と「チャット履歴の参照機能」の2つです。これらはそれぞれ異なるアプローチでChatGPTの知能をレベルアップさせています。
以前の記憶機能(Memory)は、ユーザーが明示的に「これを覚えて」と伝えることで作動する「限定的な保存機能」でした。たとえば「私のペットはトイプードル」と記憶させる、といった具合です。
しかし、今回追加された新機能「チャット履歴の参照」はまったく異なります。
過去の会話すべてを自動で文脈に含め、それを踏まえた回答が生成されるのです。
そして何よりも驚いたのが、この機能が「無意識的に」働くこと。
ユーザーが何も指定しなくとも、AIが過去の会話を自動的に参照し、文脈を補完してくれます。
これにより、「あのとき話してたあのプロジェクトどうなった?」という問いにも、「あなたの話した3つのうち、○○は進捗がありましたね」と返してくれる。
まるで、秘書以上の存在です。
実際に使ってみた──驚くべき「記憶力」と「鋭さ」
私がこの機能を使ってみたときのこと。
以前「2025年春にレビューしたい製品候補をリスト化して」と頼んだのをふと思い出し、こう尋ねてみました。
「私が春に注目していた製品って何だったっけ?」
するとChatGPTは、あの時挙げた3つのガジェットを正確に記憶し、それぞれの現状とレビュー状況まで加味して返してきたのです。
その瞬間、私は軽く鳥肌が立ちました。
ただの対話ツールではなく、私のデジタルライフに常に寄り添ってくれる記憶媒体が、ここに誕生したと感じたからです。
さらに面白かったのは「私の癖を教えて」と聞いたとき。
AIは「あなたはレビュー記事で形容詞を多用する傾向があり、特に“洗練された”という言葉を好んで使います」と答えました。
確かに……。自分の文章習慣すら、もはやAIに読まれている。
自己認識すらAIがサポートしてくれる時代に突入したというわけです。
技術的な背景と可能性
この新機能は、OpenAIが開発中のGPT-4.5に基づく改良で実現しているとされています。
特に注目すべきは、以下の3点です。
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巨大なGPUクラスタ(10万台規模)を用いたトレーニング
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「拡張定律」に基づいた新たな能力の発見
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Retrieval-Augmented Generation(RAG)の活用
RAGとは、AIが応答を生成する前に外部知識を検索し、それを文脈に含めて答える手法。
これにより、「モデルを再訓練せずに知識を拡張できる」ため、極めて経済的かつ柔軟に記憶機能を強化できるのです。
一方で、まだ残る課題と限界
もちろん、まだ完璧ではありません。
多くのユーザーが指摘しているように、「幻覚(Hallucination)」の問題は依然として存在します。
たとえば、実際には話していない記憶をでっち上げるケースや、会話の日時が曖昧になることもある。
この点は今後のアップデートに期待したいところです。
また、現在この機能が利用できるのはChatGPT PlusまたはProユーザーのみ。
しかも、EU諸国など一部の地域ではまだ提供されておらず、完全展開まではもう少し時間がかかりそうです。
未来への第一歩──AIが「あなたを覚えている」ことの意味
この機能の登場は、単なるUIの変更でも、便利な補助機能でもありません。
AIがあなたを「記憶する」時代が始まったという、文化的・哲学的な節目なのです。
いずれ、あなたが何を好み、どんな考えを持ち、どんな夢を抱いているか──そのすべてをAIが理解する時代が来るでしょう。
そのとき、私たちは「道具としてのAI」と、「相棒としてのAI」の境界線を、完全に飛び越えていくのです。
ChatGPTがついにあなたを忘れない世界へ。
私たちの記憶の一部がAIと融合するその時代に、どんな創造が待っているのか。
心が震えずにはいられません。