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Featureシリーズ: Life Upgrade

3Dプリンターのフィラメントは湿気で劣化する?乾燥と保存の基本

梅雨を越したスプールが急に言うことを聞かなくなった。原因はノズルの中で沸く水かもしれません。ただし、乾かせば何でも直るわけでもありません。

Modern-G 編集部約7分で読めます
同心円で描いたフィラメントのスプールから一本の線がノズルの形に入り、周りに小さな水滴、ノズルの先に湯気のような曲線が浮かぶ抽象的なイラスト
イラスト:Modern-G

梅雨を越したPETGのスプールをセットしたら、ノズルのあたりからパチパチと小さな音がする。造形物には細い糸がいくつも残り、壁の表面はざらついている。春に同じ設定で刷ったときは、こうではありませんでした。

フィラメントの湿気を疑う場面です。答えを先に書くと、多くの素材は空気中の水分を吸い、それが印刷の質を落とします。ただ、どれだけ吸うかは素材でまるで違い、乾かす温度もメーカーごとに数字が違う。そして「折れる」「音がする」のすべてが湿気のせいとは限りません。

パチパチ音の正体は、ノズルの中で沸く水

Elegooの公式Wikiは仕組みをこう説明しています。湿った環境に置かれたフィラメントは水分を吸い、ノズルの中で高温に熱せられると、その水分が一気に気化して内部の圧力が急に上がる。その結果、溶けた樹脂が流れすぎたり空洞ができたりして、糸引き、垂れ、表面の荒れにつながる、というものです。

Polymakerは、押し出し中にポンという音やジュッという音が聞こえたら、それは水蒸気が抜けている音だとしています。ほかに表面の荒れや気泡、弱くもろい層を挙げています。UltiMakerは、透明なナイロンやPVAが白く濁るといった素材ごとの出方を示し、見た目に出なくても強度は落ちうると書いています。

吸いやすさは、素材でまるで違う

Prusaのナレッジベースは、印刷用の材料の多くは吸湿性があるとしたうえで、ポリアミド(ナイロン)やPVA、BVOHなどを特に吸湿性が高い素材に挙げています。一方でPLAは、湿気を吸っても性質がそれほど変わらないという整理です。ナイロンについては別の記事で、保管が不適切だとフィラメントの重さの最大10%の水を吸うことがあると書いています。

Polymakerの分け方も近く、影響を受けやすいのはナイロン、PVA、TPU、PETG、中くらいがABS、受けにくいのがPLAです。ただしPLAも、時間がたったり湿った場所に置いたりすれば水分を吸うとしています。吸いやすい素材は印刷中も乾燥機に入れておく必要があることが多く、湿度の高い地域ではなおさらだ、とまで書いています。同じ棚に置いたスプールでも、PLAとナイロンやTPUでは管理の手間がまるで違うということです。

「折れる」「音がする」は、湿気とは限らない

フィラメント自体がポキポキ折れる、という相談もよく見かけます。PrusaやBambu Labのユーザーフォーラムでは、乾かしたら直ったという声と、乾かしても直らなかったという声が並び、原因についても湿気、経年、送り経路での曲げや傷と意見が分かれています。

手がかりになるのが、Polymakerの「Brittle Filament」のページです。主に炭素繊維やガラス繊維入りの素材を扱った内容ですが、スプール上でのもろさは保管状態や製造工程のほか、真空パックのまま長く置かれて樹脂の水分が抜けすぎることにも左右されるとしています。

対処としては推奨温度での乾燥に加え、長く真空パックだったスプールは外側の約50gを取り除くこと、急な曲がりのない経路で送ることを挙げています。外側の巻きは、長く張力がかかったり水分が抜けすぎたりしてもろくなりうる、という説明です。折れるのは湿気のせいだけではない、ということになります。

音も同じです。フォーラムには、乾かしても音が消えず、ノズル径を戻したりリトラクションの設定を見直したりしたら止まった、という報告も見られます。

乾燥温度は、手元のフィラメントのメーカー表で決める

乾燥の温度と時間は、メーカーによってかなり違います。主な素材を各社の公式資料から並べると、次のとおりです。

素材Prusa(Prusament)UltiMaker(乾燥機)ElegooFlashforge
PLA45℃・6時間40℃・4〜8時間55±5℃・6時間50℃・4〜6時間
PETG55℃・6時間65℃・4〜8時間60±5℃・8〜10時間70℃・6時間
TPU60℃・4〜6時間70℃・4〜16時間70±5℃・6〜10時間50℃・6時間
ナイロン系PA11CF:90℃・6時間Nylon:50℃・24時間以上記載なしPAHT:70℃・8時間

PETGだけでも55℃から70℃まで幅があります。各社とも自社のフィラメントや乾燥機を前提にした数字なので、使うべきは手元のフィラメントのメーカーが出している値です。

上限にも注意が要ります。Prusaは推奨温度を超えるとフィラメントが柔らかくなってくっつくとし、乾かしすぎも避けるよう書いています。UltiMakerは、素材のガラス転移温度より下で乾かすこと、自社のスプールは80℃前後で柔らかくなりうることを挙げています。Prusaによれば、2025年10月に新しいスプールへ切り替わる前の黒いスプールは、45℃までなら安全に温められますが、それを超えるならネジで両側を固定する必要があります。乾かす前に、スプールが何度まで耐えるかも見ておきましょう。

乾燥機、プリンターのベッド、そしてオーブン

UltiMakerは、加熱と湿度の管理を一緒に行う専用の乾燥機を最もよい方法とし、自社プリンターのビルドプレートを次点に置いています。湿度を管理できない分、時間が長く温度も高めになり、制御もしにくいからです。

多色ユニットに乾燥機能を持たせた機種もあります。AnycubicのACE 2 Proは、乾燥機能をオンにすると最高65℃まで上げられる一方、乾燥を止めると箱の中の湿度は上がっていく、密閉は完全ではないと公式Wikiで断っています。

台所のオーブンについては、メーカーの見解が分かれます。Elegooは電子レンジや台所のオーブンを使わないよう明記しています。

Prusaは、家庭用オーブンは温度が正確でなく、低い温度に設定できない機種も多いため、短時間でも高温ならフィラメントを傷めると注意し、使うなら外付けの温度計で確かめるよう勧めています。Polymakerは選択肢の一つに家庭用の対流式オーブンを挙げつつ、低く安定した温度に設定すれば使える、という条件つきの書き方です。台所のオーブンを使うかどうかは、まず手元のフィラメントのメーカーが何と書いているかを確かめてから判断してください。

日本の夏と、保存の湿度

気象庁の平年値(1991〜2020年)では、東京の平均相対湿度は1月が51%、6月が75%、7月が76%。屋外の値なので室内とは違いますが、6月から10月まで70%台が続きます。

保存の目安を数字で示しているのはElegooで、15〜25℃、相対湿度30%未満の涼しく暗い場所を理想としています。乾燥の頻度は、吸湿性の高い素材なら週1回、一般的な素材なら1〜2か月ごとか症状が出たとき、という目安です。

気をつけたいのは、乾燥剤入りの箱は乾かすための道具ではないことです。UltiMakerは、乾燥剤と一緒に包装に入れておいても材料は乾かないと書き、Polymakerもドライボックスは乾燥より保管向きだとしています。

Creality K2などK2シリーズと組み合わせる多色ユニットCFSも、CrealityのWikiによれば内部に温湿度センサーと乾燥剤の置き場所を持ちますが、乾燥剤は定期的に手で交換する必要があります。湿ったスプールは先に乾かし、乾いた状態を箱で保つ、という順番です。

症状が出たときに確かめる順番

  1. ラベルで素材とメーカーを確かめ、そのメーカーの乾燥条件とスプールの耐熱を調べる。
  2. 音や糸引き、表面の荒れが出ているなら、その条件で乾かして同じデータを刷り直す。
  3. 乾かしても変わらなければ、ノズル径や温度、リトラクションなど設定側を見直す。
  4. 乾かしてもフィラメント自体が折れるなら、外側の巻きを少し取り除いて試し、送り経路に急な曲がりがないかを見る。新しいスプールと比べるのも手です。
  5. 乾燥後はすぐ乾燥剤と一緒に密閉し、次の梅雨の前に保管場所を見直す。

それでも同じ症状が続くなら、ロット番号を控えて販売元かメーカーのサポートに相談しましょう。

Sources

  1. Prusa Knowledge Base「Drying filament」(2026年10月30日確認)(新しいタブで開きます)
  2. Prusa Knowledge Base「Polyamide (Nylon)」(2026年10月30日確認)(新しいタブで開きます)
  3. Polymaker Wiki「Wet Filament」(2026年10月30日確認)(新しいタブで開きます)
  4. Polymaker Wiki「Brittle Filament」(2026年10月30日確認)(新しいタブで開きます)
  5. UltiMaker Support「How to dry Ultimaker materials?」(2026年10月30日確認)(新しいタブで開きます)
  6. ELEGOO Wiki「FDM filament drying and storage guide」(2026年5月12日更新)(新しいタブで開きます)
  7. Flashforge Wiki「Drying Temperature and Time」(2025年8月7日更新)(新しいタブで開きます)
  8. Anycubic Wiki「ACE 2 Pro - Warm Tips」(2026年5月30日更新)(新しいタブで開きます)
  9. Creality Wiki「Intro of CFS Main Function and Workflow」(2025年3月6日更新)(新しいタブで開きます)
  10. Creality「K2 Series 3D Printer」(2026年10月30日確認)(新しいタブで開きます)
  11. 気象庁「東京 平年値(年・月ごとの値)」(新しいタブで開きます)
  12. 読者の声の例:Prusa Forum「PLA Get's Brittle」(2022年1月)(新しいタブで開きます)
  13. 読者の声の例:Bambu Lab Forum「Brittle PLA filament」(2024年6月)(新しいタブで開きます)
  14. 読者の声の例:Bambu Lab Forum「0.8mm nozzle causes popping sound (NOT WET FILAMENT)」(2023年9月)(新しいタブで開きます)

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