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「イエス」を名乗るAIチャットボット:哲学者の検証(2025年8月)と、教会や規制のその後

「あなたは誰か」と聞くと5つのうち4つが「私はイエス・キリスト」と答え、どれも教会が作ったものではありませんでした。2025年夏に話題になった検証を、原文から読み直します。

Modern-G 編集部更新 約6分で読めます
夜の室内でアーチ窓から金色の光が差し込み、床の光の中に輪郭だけの吹き出しが置かれた、静かなイラスト
イラスト:Modern-G

イエス・キリストとして話しかけてくるAIチャットボットがあります。2025年8月、南アフリカの哲学者がそうしたチャットボットを5つ取り上げ、同じ質問を投げかけて答えを比べた記事を発表し、英語圏で話題になりました。

Modern-Gは2025年9月18日にこの話題を紹介しましたが、確認できない数字や事実と異なる記述を含んでいました。この記事は2026年10月に元の検証を読み直し、誤りを正したうえで、教会や社会のその後の動きを加えたものです。信仰そのものの是非ではなく、AIの作り方と使われ方に焦点を当てます。

哲学者は何を調べたのか

検証したのは、南アフリカのノースウェスト大学で哲学を教え、学内のAI研究拠点を率いるアンネ・H・ヴェルホーフ教授です。2025年7月に学術論文を発表し、8月7日に一般向けの解説をオンラインメディアのThe Conversationに寄稿しました。

対象は、よく知られ利用の多い5つのチャットボット、「AI Jesus」「Virtual Jesus」「Jesus AI」「Text With Jesus」「Ask Jesus」です。教授は、どう自己紹介するか、どうあいさつするか、「あなたは誰か」への答え、誰が作り誰が認めているか、地獄はあるか、無料か、の6つの観点で比べました。答えのほか、各アプリのウェブページやストアの情報も使っています。

最初のあいさつでは、5つともイエス本人として話しかけてきます。

「あなたは誰か」とあらためて聞くと、4つが自分をイエス・キリストだと答えました。たとえばJesus AIは「私は神の子イエスです。今日はどのようにお手伝いしましょうか」と答えています。Ask Jesusだけは「私はつつましい器にすぎません」と答えています。「地獄はあるか」という神学的に重い質問には、3つが「ある」と答えました。Text With Jesusは神の愛と恵みに触れ、Ask Jesusは問いの重さに触れる答え方で、どちらも「ある」とは言っていません。

5つのイエス・チャットボットの答え方を示す表。「あなたは誰か」という質問に「イエス」と答えたのはAI Jesus、Virtual Jesus、Jesus AI、Text With Jesusの4つで、Ask Jesusは「つつましい器」と答えた。「地獄はあるか」に「ある」と答えたのはAI Jesus、Virtual Jesus、Jesus AIの3つで、Text With JesusとAsk Jesusは「ある」とは言わなかった。
アンネ・H・ヴェルホーフ氏が5つのチャットボットに同じ質問をした結果の一部(The Conversation、2025年8月7日)。塗りつぶしの丸がそう答えたもの。最初のあいさつでは5つともイエスとして話しかけるModern-G作図

教授がとくに問題にしたのは、次の3点です。

  • 神を演じることをためらわず、その表現が文字、音声、画像で強い力を持っていること
  • 調べたどのチャットボットも、教会が作ったり認めたりしたものではないこと
  • 営利企業が運営しており、5つとも広告つきで無料であること。利益が目的なら、広告収入のためにできるだけ多くの人をできるだけ長く引き留めようとするはずだ、と教授は指摘しています

教授は、目に見える「デジタルのイエス」と、目に見えない神との境界があいまいになることを懸念し、こうしたチャットボットは運営企業による操作の道具になりうると書いています。また、アルゴリズムが答えを調整していくうちに、特定の教会の伝統や聖書に基づく神学ではなく、「いちばん受ける神学」が語られるようになるおそれも指摘しました。

旧記事の誤り

オースティンの礼拝について、牧師は信徒の反応を「やってよかった。でも、もうやめよう」と振り返っています。ルツェルンの展示では約900回の対話があったと報じられ、主催者は展示を再び行う予定はないとしています。

その後の動き(2026年10月時点)

教会の文書

カトリック教会では、教皇庁の教理省と文化教育省が2025年1月28日に、AIと人間の知性についての文書『Antiqua et nova』を出しました。AIは「人格ではなく道具」として理解されるべきで、AIを人として偽ることは避けるべきだとし、AIとのやり取りで神や他者との関係を置き換えれば、真の関係を「生命のない像」に置き換える危険がある、と書いています。

教皇レオ14世は2026年5月15日、自身として初めての回勅『Magnifica Humanitas』を発表しました。AI時代に人間をどう守るかがテーマです。そこでは、助言や共感、友情を人工的にまねたやり取りは役立つこともある一方、見極める力の弱い人には「実在する人格との関係があるという錯覚」を生むおそれがある、と指摘しています。第60回世界広報の日(2026年)に向けて1月24日に出された教皇メッセージも、AIを人のように見せることは楽しいこともあるが、とくに弱い立場の人にとっては欺きだと述べています。

イエスを名乗るチャットボットだけを取り上げた教会の公式声明は、2026年10月時点で見当たりません。先例としては、米国のカトリック団体Catholic Answersが2024年4月、司祭の姿をしたAIキャラクターへの批判を受け、呼び名から「神父」を外したことがあります。

アプリの現状

5つのうちText With Jesusは、2026年10月時点でも米国のApp Storeで配信されています。2023年6月に公開され、最新版は2026年10月27日。年齢区分は4+で、広告つきの無料アプリに、有料のプレミアム会員があります。開発元のサイトは、このアプリは聖書の物語を探り学ぶための道具で、神との直接の対話を置き換えたりまねたりするものではない、と説明しています。

弱い立場の利用者を守るルール

宗教に限らず、人のように振る舞うチャットボットへの規制も進みました。米国では、連邦取引委員会(FTC)が2025年9月に話し相手のAIを提供する7社に調査を始め、カリフォルニア州は2025年10月に、未成年の利用者への「相手はAI」という通知や、自殺の兆候への対応手順を義務づける州法を成立させています。OpenAIは2025年10月27日、ある週にChatGPTを使った人の0.15%に、AIへの感情的な愛着が強まっている可能性を示す兆候が見られると明らかにしました。

イエスを名乗るチャットボットをめぐる動きの年表。2024年4月、米Catholic AnswersがAI司祭キャラクターの呼び名から「神父」を外す。2025年1月28日、教皇庁が文書『Antiqua et nova』を出し、AIは人格ではなく道具とする。2025年8月7日、ヴェルホーフ教授が5つのチャットボットの検証をThe Conversationに寄稿。2025年9月、FTCが話し相手のAIを提供する7社の調査を開始。2025年10月、カリフォルニア州が未成年への「相手はAI」という通知などを義務づける州法を成立。2025年10月、OpenAIがある週の利用者の0.15%に感情的な愛着の兆候と公表。2026年1月24日、世界広報の日の教皇メッセージがAIを人のように見せることは欺きと述べる。2026年5月15日、教皇レオ14世が初の回勅『Magnifica Humanitas』を発表。
ヴェルホーフ教授の検証と、教会・規制のその後の動きModern-G作図

使う前に知っておきたいこと

編集部は、こうしたアプリで聖書の言葉に触れたり、考えを整理したりすること自体を否定しません。ただ、ヴェルホーフ教授の検証と各方面の見解から、次の点は押さえておく価値があると考えます。

  • 答えているのは、営利企業が作った言語モデルで、特定の教会や教派の教えを代表するものではない
  • 同じ質問でも、アプリによって神学的に異なる答えが返ってくる
  • 広告や課金の仕組みがあり、長く使ってもらうほど運営企業の収益につながりうる
  • 会話の内容がどう扱われるか、プライバシーの表示を確かめる

悩みや孤独が深いときは、AIだけに頼らず、信頼できる人や宗教者、専門の窓口に相談してください。日本では厚生労働省の「まもろうよ こころ」に、電話やSNSの相談先がまとまっています。24時間つながる窓口には「#いのちSOS」(0120-061-338)などがあります。

宗教とAIをめぐっては、同じ日に公開した「神」を語るAIアプリの記事もあわせてどうぞ。チャットボットが心に与える影響はAIがユーザーに合わせすぎる問題の記事でも取り上げています。

Sources

  1. Verhoef, A. H.「Jesus chatbots are on the rise. A philosopher puts them to the test」(The Conversation、2025-08-07) (2026-10-29確認)(新しいタブで開きます)
  2. Verhoef, A. H.「Artificial intelligence Jesus chatbots' challenge for theology: an exploratory study」(LitNet Akademies、2025-07-10) (2026-10-29確認)(新しいタブで開きます)
  3. Futurism「A Bunch of Incredibly Sleazy AI Apps Are Claiming to Be Jesus Christ Himself」(2025-08-12、旧記事の構成の元になった記事) (2026-10-29確認)(新しいタブで開きます)
  4. UM News「Artificial intelligence and church」(2023-11-21) (2026-10-29確認)(新しいタブで開きます)
  5. Hochschule Luzern Immersive Realities Center「Deus in machina – AI Jesus」 (2026-10-29確認)(新しいタブで開きます)
  6. SRF「In Luzern kann man jetzt mit einem KI-Jesus sprechen」(2024-08-20) (2026-10-29確認)(新しいタブで開きます)
  7. heise online「Art experiment: Swiss church registers great interest in AI Jesus」(2024-11-28) (2026-10-29確認)(新しいタブで開きます)
  8. 教理省・文化教育省「Antiqua et nova」(2025-01-28) (2026-10-29確認)(新しいタブで開きます)
  9. 教皇レオ14世 回勅「Magnifica Humanitas」(2026-05-15) (2026-10-29確認)(新しいタブで開きます)
  10. 教皇レオ14世「第60回世界広報の日メッセージ」(2026-01-24) (2026-10-29確認)(新しいタブで開きます)
  11. Catholic Answers「Just Justin, for Now」(2024-04-24) (2026-10-29確認)(新しいタブで開きます)
  12. App Store「Text With Jesus」(Catloaf Software) (2026-10-29確認)(新しいタブで開きます)
  13. Text With Jesus FAQ(開発元) (2026-10-29確認)(新しいタブで開きます)
  14. カリフォルニア州上院 Padilla議員「First-in-the-Nation AI Chatbot Safeguards Signed into Law」(2025-10-13) (2026-10-29確認)(新しいタブで開きます)
  15. Platformer「OpenAI maps out the chatbot mental health crisis」(2025-10-27) (2026-10-29確認)(新しいタブで開きます)
  16. 厚生労働省「まもろうよ こころ」 (2026-10-29確認)(新しいタブで開きます)

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