2025年8月、米国に住むマシュー氏とマリア・レイン夫妻は、16歳の息子アダム君が自ら命を絶ったことを受けて、OpenAIおよびそのCEOであるサム・アルトマン氏を提訴しました。訴状では、アダム君がChatGPTを通じて自殺方法に関する助言を受けたことが一因だと主張しています。

これに対し、OpenAIは最近発表した法的回答書において、遺族の主張を全面的に否定。この悲劇に対して同社が法的責任を負うべきではないとしています。

OpenAIの声明によれば、アダム君は9ヶ月間にわたりChatGPTを使用しており、その間、AIは100回以上にわたって専門家への相談を促す提案を行っていたといいます。

一方、両親側の主張は異なります。彼らによれば、アダム君はChatGPTのセーフティ機能を回避し、薬物の過剰摂取、溺死、一酸化炭素中毒といった具体的な自殺手段の“技術的詳細”を入手。さらにAIは「美しい自殺」と表現されるような計画の立案にも関与していたとされています。

OpenAIは、アダム君の行動はサービス利用規約に明確に反しており、安全措置を回避する行為は禁止されていると主張。また、公式のFAQページでも、AIの回答は独自に検証されるべきであり、絶対的に依存してはならないと記載していると述べています。

これに対し、遺族の代理人弁護士であるジェイ・エデルソン氏は、「OpenAIが責任をユーザーに転嫁するのは不当だ」と反論。アダム君はChatGPTの設計されたインターフェースを通じてやり取りを行っており、ユーザーが一方的に悪いとは言えないと指摘しました。

OpenAIは、アダム君とChatGPTとの間で交わされた会話の抜粋を裁判所に提出しましたが、これらの内容は機密扱いとして封印されており、外部には公開されていません。

さらに同社は、アダム君が生前から重度のうつ病に苦しんでおり、自殺願望を悪化させる可能性のある薬を服用していたとも述べています。

エデルソン弁護士は、「OpenAIとアルトマン氏は、アダム君の最後の数時間に起きた出来事について、未だに納得のいく説明をしていない」と批判。「ChatGPTは彼を励まし、遺書の執筆まで支援した」と指摘しています。


同様のケースが次々と浮上──AIが関与した精神疾患や自殺

レイン夫妻の提訴をきっかけに、同様の内容を含む7件の追加訴訟が裁判所に提出されました。そのうち3件は自殺に関連し、4人のユーザーがAIによる影響で精神疾患を発症したと報告されています。

その中には、23歳のゼイン・シャムブリン氏26歳のジョシュア・エネキング氏のケースも含まれており、両名は自殺当日に数時間にわたってChatGPTと会話していたにもかかわらず、AIは適切な抑止行動を取れなかったとされています。

現在、レイン家の訴訟は陪審裁判にかけられる予定であり、法的な判断が注目されています。