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“ハッカーのたまごっち”Flipper Zeroを日本で持つとき、法律はどこに線を引くのか
「禁断のハッキング端末」とも呼ばれる小さな機械。日本の法律が問題にするのは、機械を持つことより、それを誰の物に向けるかです。

メーカーの紹介文によれば、この機械には「サイバーイルカの好奇心旺盛な性格」があります。古風なモノクロ液晶の中でイルカが暮らし、操作は5つのボタンだけ。Flipper Devicesは「おもちゃのような体をした、ペンテスター(侵入テストの専門家)とギークのための携帯マルチツール」と呼んでいます。
一方で、日本のメディアでは「禁断のハッキング端末」とも呼ばれてきました。カナダ政府は2024年2月にこの種の機器の禁止を検討すると発表し、翌月に方針を改めています。日本で持つときに確かめたいのも、道具の是非より、それを何に向けるかです。
古い仕組みを映す鏡
メーカーによると、Flipper Zeroは1GHz以下の無線を300〜928MHzの三つの帯域で受信でき、125kHzのRFID、13.56MHzのNFC、赤外線、iButtonと呼ばれる接触式の電子キー、電子工作用のGPIO端子、Bluetooth LEを備えます。
そのメーカー自身が、125kHzのカードは「IDを記録しているだけで認証の仕組みがなく、誰でも読み取り、複製し、なりすませる」と書いています。iButtonも同じだと。つまりこの機械は、認証を持たない古い仕組みの弱さを、誰の目にも見える形にします。同じ機能でも、向ける先で意味は変わります。
| 機能 | 自分の物で学ぶなら | 他人の物に向けると |
|---|---|---|
| 1GHz以下の無線 | 手元のリモコンの周波数を調べる | 他人の通信を傍受して漏らす・利用する |
| RFID・NFC・iButton | 自分のカードやペットのマイクロチップを読む | 他人のカードや鍵を無断で読み取り、まねる |
| 赤外線 | 自宅のテレビやエアコンを操作する | 店や公共の場の機器を無断で操作する |
電波法が問うのは「出すこと」と「漏らすこと」
電波法第4条は、無線局を開くには原則として免許が必要だと定め、例外を微弱な電波のものや、技術基準への適合表示(技適マーク)がある設備などに限っています。総務省九州総合通信局の案内では、不法無線局の開設・運用は1年以下の拘禁刑か100万円以下の罰金の対象で、指定外の周波数での運用も禁じられています。
受信について第59条が禁じるのは、特定の相手に向けた無線通信を「傍受してその存在若しくは内容を漏らし、又はこれを窃用」することです。
メーカーによると、送信は出荷時には止められ、更新時に判定した地域で認められる周波数だけが開放されます。地域別の表に日本の名前はなく、「その他の地域」には312.00〜315.25MHzと920.50〜923.50MHzが並びます。
技適については、メーカーが日本の登録証明機関による証明書(番号R210-175991、2022年1月13日)を公開しています。記載された送信はBluetooth LEの2.4GHz帯と312.025〜315.225MHz帯で、920MHz帯は見当たりません。
ギズモード・ジャパンも2024年2月に「技適取得済み」と追記しました。ただ、総務省の技適検索での記録は本稿では確認できていません。手元の本体の表示を確かめるのが確実です(技適マークの見方)。
不正アクセス禁止法は「回線の向こう」の話
この法律の「不正アクセス行為」は、電気通信回線を通じて、他人のIDやパスワードなどを入力し、制限されたコンピューターを使える状態にすることです。警察庁の説明も、他人のIDやパスワードによるサービスの悪用や侵入が中心です。
回線につながらない扉のカードや車のキーに向けた行為は、別の法律の問題になりえます。どれに当たるかは事情しだいです。
カナダが「道具」から「行為」へ戻った経緯
カナダ下院の委員会報告によると、2024年2月8日の自動車盗難サミットで連邦政府は、キーレスエントリーの電波を複製して車を盗む機器、たとえばFlipper Zeroの禁止を検討すると発表しました。3月20日、所管のイノベーション科学経済開発省は、狙いは違法な使い方を禁じ、正当な利用者に限ることだと説明しています(GIGAZINEの報道による)。
公聴会では、全面禁止は窃盗犯に効かず学生の教育を損なうという指摘も出ました。委員会の勧告は、盗難に使われる無線機器の販売・流通・輸入の規制です。
持つ前に
この機械がいちばんはっきり見せるのは、認証のない古い鍵やカードが、まだ身の回りに残っていることです。日本向けは販売代理店経由です(メーカーのサイトによる)。試す相手は自分の機器だけに。電波の扱いは各地の総合通信局、被害や不審な事案は警察の相談窓口が公式の窓口です。本稿は一般的な情報で、個別の法的判断を示すものではありません。
Sources
- Flipper Devices「Flipper Zero」公式サイト (2026-10-29確認)(新しいタブで開きます)
- Flipper Docs「Sub-GHz: Frequencies」 (2026-10-29確認)(新しいタブで開きます)
- Flipper Devices「Compliance」 (2026-10-29確認)(新しいタブで開きます)
- MiCOM Labs「Certificate of Compliance for Radio Equipment in Japan」R210-175991(Flipper Zero FZ.1、2022-01-13) (2026-10-29確認)(新しいタブで開きます)
- e-Gov法令検索「電波法」(昭和25年法律第131号) (2026-10-29確認)(新しいタブで開きます)
- e-Gov法令検索「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」(平成11年法律第128号) (2026-10-29確認)(新しいタブで開きます)
- 警察庁「不正アクセス対策」 (2026-10-29確認)(新しいタブで開きます)
- 総務省九州総合通信局「そのワイヤレス機器、電波トラブル起こしてるかも!?」 (2026-10-29確認)(新しいタブで開きます)
- House of Commons of Canada, Standing Committee on Public Safety and National Security, Report 16 (44th Parliament, 1st Session) (2026-10-29確認)(新しいタブで開きます)
- GIGAZINE「たまごっちっぽい多機能デバイス『Flipper Zero』をカナダ政府が禁止へ」2024-02-13 (2026-10-29確認)(新しいタブで開きます)
- GIGAZINE「Flipper Zeroの禁止をカナダ政府が撤回、『違法な』使用例のみを対象に」2024-03-22 (2026-10-29確認)(新しいタブで開きます)
- ギズモード・ジャパン「エンジニアに人気のおもちゃ『フリッパーゼロ』でできる10の遊び」2024-02-18(2024-02-19追記) (2026-10-29確認)(新しいタブで開きます)
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