キャンプ飯を作り始めた途端、「包丁はどこだっけ」「皿を置く場所がない」「調味料を取るたびに箱を開けるのが面倒」と、せっかくの外時間が細かな段取りに追われてしまう。そんな経験はないでしょうか。
HECHEERが面白いのは、その不便を“道具を増やす”のではなく、キッチンそのものをひとつの箱にまとめることで解こうとしているところです。折りたたんだ状態では730×416×385mmのアルミケース。それが展開すると約1184×744×493mmの作業ステーションへ広がり、収納、下ごしらえ、加熱、配膳までを一か所に集約できます。重量は12.5kg。バックパックに入れて歩く軽量ギアではなく、車でキャンプへ出かける人にとっての“持ち運べるキッチンキャビネット”と考えると、その立ち位置がよく分かります。
HECHEERの特徴
二品を同時に進められる、デュアルゾーン調理
外での料理は、一口コンロだと「湯を沸かしてから肉を焼く」「スープを仕上げてから次へ進む」と順番待ちが生まれがちです。HECHEERの電気調理システムでは、2つの加熱ゾーンを個別に使えるため、片側で煮る・沸かす作業をしながら、もう片側で焼く・炒めるといった並行調理ができます。

それぞれのゾーンはTFT表示付きの回転式コントローラーで操作でき、火加減を別々に管理可能。さらに自動高度補正にも対応し、H01電気ケトル、ZG01電気鍋、JK01グリルプレートなどの対応アクセサリーと組み合わせれば、湯沸かしから煮込み、グリルまで一つの作業台の上で展開できます。

そして、電気だけに縛られないのも魅力です。天板には対応するカセットガス式ストーブを組み込める専用スペースがあり、「電源のある場所では電気で」「炎を使って豪快に焼きたい日は直火で」と、料理や環境に合わせた選択ができます。なお、デュアルゾーン電気バーナーや対応ストーブは基本構成とは別扱いで、電気バーナーは220V・50Hz電源を必要とします。

座る高さに合わせて変えられる油圧式の高さ調整
キャンプの調理台は、わずかな高さの違いが意外なほど疲れに直結します。低すぎれば前かがみになり、高すぎればローチェアに座ったまま手が届きにくい。HECHEERは天板下に油圧式の昇降機構を備え、作業面を約36.3cmと49.3cmの2段階で使い分けられます。

ロースタイルの椅子に合わせて食事を作るとき、少し高くして手元を使いたいとき。サイトのレイアウトに合わせて“キッチン側を自分に寄せられる”のは、固定高のテーブルにはない快適さです。しかも天板を持ち上げると、その下から収納スペースが現れる構造。高さを変える動きそのものが、次の収納エリアへのアクセスにつながっています。

「探す時間」を減らす3層スマート収納
HECHEERの収納は、一つの大箱へ何でも放り込む方式ではありません。下段・中段・上段の3層構造によって、用途ごとに道具の居場所を作れます。
下段のメイン収納は50L。鍋や食材、調理道具など、かさばるものをまとめて収められます。前面のアルミ扉は回転式ロックハンドルで素早く開閉でき、開けば一時的なテーブルとしても活用可能。荷物を取り出した瞬間、その扉が“置き場”になるので、鍋や皿を地面へ避難させる必要もありません。

中段には、天板を持ち上げると現れる収納レイヤーを配置。排水機構も組み込まれているため、生鮮食材や洗浄用品、濡れたギアなどを扱いやすくしています。そして上段は、調理機器を組み込んだり、作業面や収納へ組み替えたりできるモジュール式。収納量の多さ以上に、使う場所としまう場所が近いことが、料理中の小さなストレスを大きく減らしてくれます。

開ける瞬間まで心地いい、4点のマグネットロック
持ち運ぶときには、展開式のパネルが不用意に開かない安心感が欲しいもの。HECHEERは4つの磁気ロックピンによって、折りたたんだ状態を保持します。
ここで興味深いのは、ロックが単なる固定機構で終わっていないこと。磁力によってカチッと収まり、開くときにはスムーズに解放される。その一連の感触まで含めて、毎回の設営にちょっとした“ギアを展開する楽しさ”が生まれます。
ケースを開ける。パネルを広げる。収納と作業面が姿を現す。ほんの数秒前まで一つの箱だったものが、目の前でキッチンへ変わっていく。この小気味よい変化そのものが、外遊びを始めるスイッチになってくれます。

ガスアシスト式サイドパネルで、作業面を一気に拡張
食材を切る場所、皿を並べる場所、調味料を置く場所。キャンプ料理では、この“ほんの少しの余白”が驚くほど重要です。HECHEERの側面にはガスアシスト式の折りたたみパネルがあり、滑らかに展開して追加の作業スペースを作れます。
上部の前後にある拡張テーブルは、それぞれ最大20kgまで対応。さらに一体型の吊り下げレールにはヘラ、カップ、ナイフ、タオルなどを掛けられ、ねじ式マウントにはライトスタンドやラック、吊り棚などを取り付けられます。日が落ちた後には照明を手元へ配置しやすく、道具を“置く”だけでなく“吊るす”ことで、限られたスペースを立体的に使えるわけです。
すべてを広げれば、箱だったものがまるで小さな屋外厨房へ変わる。料理中に置き場所を求めて何度も振り返ったり、空いた椅子を即席の荷物置き場にしたりする場面が減り、作ることそのものに集中できます。

キャンプだけに閉じない、場所を選びにくいアウトドアキッチン
HECHEERが想定しているのは、テントサイトだけではありません。キャンプはもちろん、RVでの旅、車を使ったアウトドア、庭での食事や集まり、モバイルリビングなど、さまざまな外時間に対応できる構成です。
折りたためば一つのケースになり、必要な場所で広げれば収納と作業台と調理スペースが現れる。この可変性があるからこそ、「キャンプ専用品だから年に数回しか使わない」という距離感になりにくい。庭で友人を招く日はサブキッチンとして、車旅では調理基地として、キャンプではサイトの中心として使う。アウトドアキッチンを“場所に固定された設備”から“持って行ける生活空間”へ変える発想です。

まとめ
HECHEERの魅力は、機能の数ではありません。外で料理するときに生まれる散らかり、探し物、作業スペース不足、姿勢の窮屈さを、一つのシステムでまとめて整えられることにあります。
50Lの収納から必要な道具を取り出し、天板の高さを合わせ、サイドパネルを広げ、二つの料理を同時に進める。使い終えたら、再び一つのアルミケースへ。キャンプキッチンを組み立てるために何種類ものテーブルやラックを持ち込むのではなく、“箱そのものをキッチンに変える”。それがHECHEERです。
外で食べる料理をもっと楽しみたい。でも、準備や片付けには振り回されたくない。そんな人にとってHECHEERは、道具をひとつ増やすための製品ではなく、アウトドアでの料理時間そのものを、もっと整然と、もっと自由に変える一台になりそうです。










