デジタルミュージックが普及する現在でも、CD が持つ温かみと精細な音質を求める音楽愛好者は少なくありません。そんなニーズに応えるべく、SHANLING は「EC Zero」という新たなポータブル CD プレーヤーを発表しました。この製品は、同社既往モデル「EC Zero T」の優れた点を継承しつつ、オーディオ回路を刷新することで「細部まで豊かな音」と「緻密なディテール」を実現しています。ソリッドアルミニウムの CNC 一体成形によるコンパクトデザインと物理ボタンの直感的操作を維持しつつ、内部部品の全てを高品質なものに刷新 ——EC Zero は「ポータブル性」と「ハイエンド音質」を両立させた、現代の CD リスニング体験を提供する存在です。どんな場所でも、CD 本来の音楽の魅力を最大限に引き出すことを目指したこの製品は、単なる「再生機」を超えた、音楽との新しいつながりを生み出すツールと言えるでしょう。
SHANLING EC Zero の特徴
EC Zero の最大の魅力は、その「精密な技術力」がどの部分にも浸透している点にあります。まず、ディスクの固定方式から見てみましょう。同製品はカスタマイズされたディスクトレイとトップカバーに「磁気吸着パーツ」を採用しています。従来のビーズ式固定方式では、振動による音質劣化やディスクの安定性低下が課題となることがありましたが、EC Zero の磁気吸着はディスクを両面からしっかり固定するため、機械振動を効果的に抑制し、高い制振性能と動作安定性を実現しています。例えば、カバンの中で少し揺れたとしても、ディスクの位置がずれることが少なく、安定した再生を続けることができるのです。このような細かい設計が、長時間のリスニングでも疲れない体験を作り上げています。

音質の基盤となるのは、「高品位な CD ピックアップシステム」と「カスタマイズサーボシステム」の組み合わせです。CD の音質は、ディスクから信号を読み取る精度に大きく左右されます。EC Zero のピックアップシステムは、従来モデルよりも精密な読み取りを可能にし、素早く正確に信号をキャッチする能力を備えています。さらに、サーボシステムのミリ秒単位の駆動が、音楽の「途切れ感」を解消し、連続性の高いサウンドを実現しています。これはどういうことでしょうか? 例えば、複雑な楽器の重なりが多いクラシック音楽を再生する場合でも、各楽器の音が正確に分離され、混ざり合うことなく明確に聞こえるようになるのです。これにより、CD に記録された音楽の「純粋さ」を最大限に引き出すことができます。

ピックアップシステムの安定性を支えるのは、「カスタマイズされた専用モーター」です。このモーターには「パラジウムメッキブラシ」が搭載されていますが、このブラシの役割は決して小さくありません。パラジウムは耐食性と導電性に優れた金属で、長時間の連続稼働でも磨耗が少なく、安定した性能を維持できる特徴があります。そのため、EC Zero は例えば一日中 CD を再生し続けるような使用シナリオでも、ディスクの回転速度が変動したり、読み取りエラーが発生したりすることが少なく、ストレスフリーなリスニング体験を提供します。この「長期安定性」は、ポータブル機器としての信頼性を大きく高める要素の一つです。

当然のことながら、SHANLING は EC Zero の品質を極めるため、「クラフトマンシップクオリティ」を徹底しています。同製品は工場から出荷される前に、数々の厳格な測定と検査をクリアする必要があります。具体的には、「ピックアップシステムのキャリブレーションチェック」で信号読み取りの精度を確認し、「高温・低温環境での動作検証」で様々な使用環境への適応性をテストするなど、検査項目は多岐にわたります。これは単なる「品質管理」を超え、「ユーザーがどんな場所でも安心して使用できる」という理念の表れです。例えば、夏の車内のような高温環境や、冬の屋外のような低温環境でも、EC Zero は安定した性能を発揮できるように設計されているのです。

音質の核心を担うのは、「AK4493S DAC」の採用です。AK4493S は旭化成エレクトロニクスが開発した DAC(デジタルアナログコンバーター)で、低消費電力と高速な処理速度が評価されています。しかし、EC Zero は単にこの高品質 DAC を搭載するだけでなく、SHANLING のエンジニアチームが長年培ってきた技術を組み合わせることで、サウンドに「豊かな響き」と「緻密なディテール」を加えています。これにより、人の声の温かみや楽器の微妙なニュアンスまで表現できるようになり、「単なる再生」ではなく「音楽の感情を伝える」サウンドを実現しています。例えば、ボーカル曲を再生した際には、歌手の息遣いや感情の変化まで細かく捕捉でき、より臨場感あふれる音楽体験を得られるでしょう。

DAC の後段に位置する AMP(アンプ)部には、「SGM8262-2」をデュアル構成で採用しています。SGM8262-2 は SGMicro 社の製品で、強力なダイナミックレンジと低歪みが定評のあるアンプ IC です。このデュアル構成がもたらす効果は顕著で、バッテリー動作時には最大「525mW@32Ω」の出力を発揮できるため、様々なイヤホンやヘッドフォンに対応できる汎用性を持たせています。低インピーダンスのイヤホンでも大音量での歪みを抑え、高インピーダンスのヘッドフォンでも十分なドライブ力を提供することで、ユーザーが持つオーディオ機器を最大限に活用できる環境を作り上げています。

さらに、EC Zero は「EXT DC モード」を搭載することで、デスクトップ環境での使用も考慮しています。筐体のリア部分にある「P MODE」を「EXT DC」に切り替えると、バッテリー駆動から DC 外部電力入力のモードに切り替わり、最大「836mW@32Ω」の高出力を発揮できるようになります。これにより、自宅のデスクで使用する際には、ポータブル機器としての制約を超えた、より力強いサウンドを楽しむことができます。また、フロント部分には「3.5mm シングルエンド端子」と「4.4mm バランス端子」の両方を搭載しているため、シングルエンド接続のイヤホンからバランス接続の高級ヘッドフォンまで、幅広いオーディオ機器とのマッチングが可能です。

現代のデジタルライフスタイルに対応するため、EC Zero は「USB DAC モード」も搭載しています。ファンクションキーから「USB DAC Mode」に切り替え、製品背面の「USB DAC」端子にスマートフォンや PC を接続するだけで、本機をハイエンドクラスの USB-DAC/AMP として使用することができます。これにより、ストリーミングサービスの音楽や PC に保存した高解析度音源を、EC Zero の高品質な DAC とアンプで再生できるようになり、「CD 再生」だけでなく「多様なデジタル音源の再生」にも対応できる多機能性を実現しています。ゲーミング体験や映像コンテンツの視聴時にも、クリアな音声を提供することで、娯楽体験を向上させることも可能です。

操作面では、「物理キーとスライド式ボリュームノブ」を採用することで、直感的な使用を重視しています。スライド式ボリュームノブは、回転式に比べて微妙な音量調整がしやすく、ユーザーの手の感覚に合わせて音量をコントロールできるため、自然な操作感を提供します。また、楽曲の再生 / 一時停止や曲送りといった基本操作は物理キーで行え、各種設定変更はファンクションキーで切り替えられるため、メニューを深く潜ることなく必要な機能を素早く呼び出せる設計になっています。これは、ポータブル機器として「見ながら操作する」場面を減らし、「音楽に集中したい」ユーザーのニーズに応えるものです。

ディスプレイのデザインも EC Zero の特徴の一つで、「オレンジカラーのレトロ UI」が採用されています。1.68 インチの LCD スクリーンには、楽曲の再生情報(曲名、再生時間など)や各種設定項目がシンプルなレイアウトで表示されるため、視認性が高くなっています。特に、モード切替時に機能しなくなる項目はグレーアウト表示されるため、ユーザーが誤って操作することを防ぎ、ユーザビリティを向上させています。オレンジカラーの UI はレトロな雰囲気を醸し出しつつも、明るい環境でも見やすい輝度が確保されているため、屋外での使用にも支障をきたしません。

ポータブル機器として不可欠な「5500mAh リチウムイオンバッテリー」を内蔵することで、長時間の使用を可能にしています。具体的な連続再生時間は、3.5mm シングルエンド端子使用時で約 10 時間、4.4mm バランス端子使用時で約 10 時間、Bluetooth 送信モードでは約 18.5 時間となっています。これは、例えば一日の外出や旅行の途中で、複数の CD を順番に再生し続けることができるだけの容量であり、バッテリー切れを心配することなく音楽を楽しむことができます。また、充電には付属の USB-A to C ケーブルを使用するため、一般的な USB 充電器で充電できる汎用性も備えています。

無線環境での使用にも対応するため、「Bluetooth 5.3」を搭載し、「Bluetooth 送信」機能をサポートしています。Bluetooth 5.3 は従来のバージョンに比べて接続安定性が向上し、消費電力も抑えられています。対応コーデックは aptX Adaptive、aptX、SBC で、特に aptX Adaptive は高音質と低遅延を両立させるため、音楽再生だけでなく動画視聴時の音声遅延も抑制できます。また、この Bluetooth モードは「CD Mode」と「USB DAC Mode」の両方で使用可能なため、有線接続だけでなくワイヤレス接続でも EC Zero の高品質なサウンドを楽しむことができます。例えば、Bluetooth ヘッドフォンを接続して外出中に CD を再生すれば、ケーブルの束縛から解放された自由なリスニングが可能になります。

最後に、ユーザーの利便性を高める機能として「キーロック機能」と「CD リッピング機能」が搭載されています。キーロック機能は、筐体サイドにあるキーロックボタンをオンにすることで活性化され、物理ボタンの操作を受け付けなくなるため、カバンの中で不意にボタンを押してしまうことによる誤作動(例:再生停止や音量変更)を防ぎます。一方、CD リッピング機能は、USB DAC 電源ポートに FAT32 形式でフォーマットされた USB ドライブを接続し、再生 / 一時停止キーを長押しすることで使用でき、CD 音源を WAV フォーマットで USB ドライブに保存することができます。特筆すべきは、リッピングは等倍速度で行われるため、リッピング中も CD の音楽を楽しむことができる点です。これにより、大切な CD コレクションをデジタルデータとしてバックアップしたり、USB ドライブで他の機器で再生したりすることが容易になります。

まとめ
SHANLING EC Zero は、「ポータブル CD プレーヤー」というカテゴリーを再定義する製品と言えるでしょう。同社の既往モデル「EC Zero T」の優れたデザインを継承しつつ、「AK4493S DAC」「SGM8262-2 アンプ」といった高品質なオーディオ部品を搭載し、磁気吸着パーツや専用モーターといった細かい技術革新で「安定性」と「音質」を両立させています。さらに、USB DAC モード、Bluetooth 5.3、CD リッピング機能といった現代的な機能を追加することで、「CD 再生」だけでなく多様なユースケースに対応できる柔軟性も備えています。
コンパクトなサイズでありながら、長時間のバッテリー持続時間と高い耐久性を実現し、厳格な品質検査をクリアした製品力は、ユーザーに安心感を与えます。音楽愛好者であれば、CD が持つ温かみと精細さをポータブル環境で最大限に楽しみたいという欲求を、EC Zero は十分に満たしてくれるでしょう。また、デジタル音源との互換性も高いため、既存のオーディオ機器と組み合わせて使用する場合でも、シームレスな体験を提供できる点も魅力の一つです。
結局のところ、EC Zero は「技術力」と「ユーザーニーズ」を深く理解した上で作られた製品です。どんな場所でも、どんな音源でも、高品質な音楽体験を届けることを目指したこの製品は、今後のポータブルオーディオ市場に大きなインパクトを与えることでしょう。










