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Featureシリーズ: Life Upgrade

ロボット掃除機がコードや家具に引っかかるのはなぜ?障害物回避の限界

「障害物回避」はひとつの機能ではなく、高さも得意分野も違うセンサーの重ね合わせ。どの層の死角にはまったのかが分かれば、直す場所も見えてきます。

Modern-G 編集部約7分で読めます
横から見たロボット掃除機の前方へ点線のセンサーの光が扇形に伸び、その下の床を細いケーブルが波打ち、ケーブルの上に黄色い点、右に細い家具の脚が二本立つ、抽象的なイラスト
イラスト:Modern-G

掃除が終わったはずの時間にアプリを開くと、ロボットはスマホの充電ケーブルをブラシに巻き込んだまま止まっていた。別の日には、ダイニングの椅子の脚に囲まれて出られなくなっている。箱には「200種類以上の障害物を認識」と書いてあったのに、と思うのは自然なことです。

似た相談は、価格.comのクチコミやYahoo!知恵袋にも見られます。カメラ付きの機種でもコードを巻き込むのか、椅子の下に入り込んで電池が切れるのをどう防げばいいのか、といった内容です。ただ、メーカー各社の取扱説明書やサポートページを読むと、こうした失敗の多くは、メーカー自身が書いている限界の内側で起きています。なお、以下で引くEufy、iRobot、ECOVACSの記述は、断りのない限り各社の海外向けページから引いています。

「避ける」は、高さの違う何枚かの目でできている

障害物回避は、ひとつのセンサーの仕事ではありません。ぶつかって初めて気づくバンパー、下を向いて段差を探す落下防止センサー、機種によっては本体の上で回って壁までの距離を測るレーザー、前方の立体を測るセンサーやカメラが、それぞれ違う高さと範囲を受け持っています。

前方の目は機種で差が大きい部分です。Eufy Robot Vacuum Omni S2は、海外向け製品ページの仕様表に「3D ToF + RGB Camera + LED」とあります。ToFは光が跳ね返るまでの時間で距離を測る方式で、カラーカメラの画像からはAIが物の種類を見分けます。

Roborock Qrevo Curv 2 Flowは、模様のある光を当ててその歪みから形を読むストラクチャードライトとRGBカメラを組み合わせた「Reactive AI」で、200種類以上の障害物を見分けて回避すると、Roborockの日本向け製品ページに書かれています。

前方カメラを持たない機種もあります。パナソニックのMC-RSF600は、赤外線センサーとレーザーセンサーで障害物を検知する機種です。その取扱説明書は、レーザーセンサーより低い障害物は検知できないため衝突する場合がある、とはっきり書いています。

コードと靴下が最後まで残る理由

認識できる種類の数とは別に、各社は「どこまで小さいものを検知するか」も公表しています。Roborockは社内試験にもとづき幅5cm・高さ3cm程度の小さな物体まで認識・回避できるとし、Eufyは海外向けページで2.5×2.5×2.5cmの物体を避けると説明しています。

床に寝た充電ケーブルは太さ数ミリほどのものが多く、この最小サイズよりずっと低く細い。ケーブルは各社の認識対象に入っていますが、平らに伸びた一本を毎回確実に見分けるところまで約束している、とは読めません。ECOVACSのサポートも、黒いものや糸のように細いものには、速度を落として軽く触れることがあると注記しています。Eufyも自社ブログで、小さく細いもの、反射するもの、形の変わったものは今も読み取りにくく、認識できても必ず避けられるわけではない、と書いています。

見えたとしても安心はできません。パナソニックは説明書で、電気器具のコード、ひもやベルト、敷物の房を「巻き込まれやすいもの」に挙げています。ブラシが回りながら進む以上、少し触れただけのものでも引き込まれる可能性は残ります。

靴下も厄介です。布は床の色に溶け込みやすいうえ、丸まり方によって形が毎回変わります。iRobotのサポートの対応表を見ると、同じブランドでも、コードやペットの排泄物は回避対象なのに靴下や布類は含まない機種があります。

椅子の脚、黒いラグ、ソファの下

背の高い家具でも引っかかる理由は、形と色にあります。パナソニックの説明書は、いすやテーブルなどの脚、暗い色の壁や家具、カーテン、キャスター付きのテレビ台のような床から浮いた家具には衝突する場合がある、と書いています。細い脚は光を当てられる面が小さく、浮いた家具は床際の目と上の目のあいだに入り込みやすい、と考えると説明がつきます。Eufyも製品ページのFAQで、黒い壁、細い椅子の脚、ガラスや反射面、暗い階段を立ち入り禁止にすべき場所に挙げています。

黒っぽいじゅうたんや床が苦手なのも、各社に共通しています。iRobotは従来機のサポートで、段差センサーが暗い色の面を落ち込みと取り違える場合があるとしています。Eufyは暗い色のカーペットは正確に検知されないことがあると書き、パナソニックは黒っぽいじゅうたんや床を使用できない場所に挙げています。

高さの問題もあります。MC-RSF600は本体の高さが99mmで、約2cm以上の段差は越えられないと説明書にあります。同じ説明書は、本体が乗り上げてしまう高さにある家具や、乗り上げて動けなくなる段差を「行かせたくない所」に挙げています。Eufyも、高さ10cm未満の低い家具の下は立ち入り禁止にするよう勧めています。

「避ける」と「掃除しきる」は引っぱり合う

障害物を大きくよけるほど、その周りにはほこりが残ります。ECOVACSのサポートは、掃除する範囲を広げるためにときどき障害物に軽く触れるのは正常な動作だ、と説明しています。触れずに避けることと際まで掃除することは、もともと両立しにくいのです。

回避の感度を選べる機種なら、最も慎重にすると物から離れて走るぶん床際の取り残しが増え、緩めるとケーブルに近づく回数が増える、と考えられます。正解はなく、家のどこで何を優先するかの選択です。iRobotは米国の製品ページで、j7が初めて見つけた物の写真をアプリに送り、次回からそれを避けるか、そばまで掃除するかを人が選べると説明しています。

ペットの排泄物の回避も、保証つきの機能とは限りません。iRobotは米国の製品ページで、j7がペットの排泄物を避けられなければ本体を交換するという保証を掲げていますが、購入から1年、交換品のみ、固形の犬猫の排泄物に限る、と注記しています。日本で同じ保証が受けられるかは、今回確認した資料からは分かりませんでした。

米国のレビューサイトVacuum Warsは、ペットの排泄物を模したもの、おもちゃ、布、電源コードなどを使う5つの回避テストを、各機種の最も高い感度設定で行っています。2025年半ばの評価記事では、ほとんどの機種が少なくとも1つのテストで失敗すると書き、満点を取った機種についてさえ、現実の家で完璧な回避はないと添えています。

暗さ、汚れ、設定の入れ忘れ

カメラで物を見分ける機種は、光がないと力を出せません。iRobotは、前面のLEDは暗闇で走らせるほど明るくないと説明し、ECOVACSも光が弱いと認識に影響が出るとしています。Roborockの「昼夜を問わず」見分けるという説明は、メーカーの主張です。

レンズやセンサーの汚れも見落とされがちです。Eufyはマイクロファイバーの布で、ECOVACSは乾いた柔らかいティッシュや布で、前面のカメラや回避センサーを拭くよう案内しています。

そもそも回避機能が切れていることもあります。ECOVACSは「AIVI 3D」など、Eufyは「AI.See」という機能をアプリでオンにするよう求めています。iRobotのjシリーズなどは、間取りを覚えさせる学習走行の最中は前方カメラによる回避が働かないと明記しています。

見直す順番

手間の少ないものから順に確かめると、原因を絞りやすくなります。

  1. アプリで障害物回避(AI認識)の設定がオンか、感度がどうなっているかを確認する
  2. 前面のカメラ・3Dセンサー、側面のセンサー、底面の落下防止センサーを柔らかい布で拭く
  3. カメラ付きの機種は、照明をつけた時間帯に走らせてみる
  4. 椅子の脚が集まる場所、黒いラグ、房のあるラグ、低いソファの下を立ち入り禁止エリアにする
  5. アプリと本体のソフトウェアを更新する
  6. 電源コードは壁に沿わせ、床を横切るケーブルは片づける
ロボット掃除機が引っかかるときの見直し順。1、アプリで障害物回避の設定と感度を確認。2、前面のカメラや3Dセンサー、側面のセンサー、底面の落下防止センサーを柔らかい布で拭く。3、カメラ付きの機種は照明をつけた時間帯に走らせる。4、椅子の脚が集まる場所、黒いラグ、房のあるラグ、低いソファの下を立ち入り禁止エリアにする。5、アプリと本体のソフトウェアを更新する。6、電源コードは壁に沿わせ、床を横切るケーブルを片づける。
手間の少ない順に原因を絞るModern-G作図

6はパナソニックが説明書で求めている対策です。全部試しても家具に何度もぶつかるなら、センサーの不具合も考えられます。ECOVACSもその場合はカスタマーサービスへの連絡を案内しています。機種名とぶつかる場所を添えて、メーカーの窓口に相談してください。

障害物回避は、床を「ある程度」任せるための機能です。細いケーブルや黒いラグはメーカー自身が苦手と認める領域なので、そこだけは人が先に手を打っておく。そう割り切っておくと、どこで止まったときに何を疑えばよいかも見当がつきます。

Sources

  1. パナソニック「取扱説明書 ロボット掃除機(家庭用) 品番 MC-RSF600」 (2026年10月31日確認)(新しいタブで開きます)
  2. Roborock Japan「Roborock Qrevo Curv 2 Flow」製品ページ (2026年10月31日確認)(新しいタブで開きます)
  3. Anker(カナダ)「eufy Robot Vacuum Omni S2」製品ページ(仕様・FAQ) (2026年10月31日確認)(新しいタブで開きます)
  4. eufy(アイルランド)「eufy Omni S2」製品ページ (2026年10月31日確認)(新しいタブで開きます)
  5. eufy(オーストラリア)「Robot Vacuum Obstacle Avoidance: What Can It Actually Recognise?」(2026年10月8日更新) (2026年10月31日確認)(新しいタブで開きます)
  6. iRobot(米国)「Camera, PrecisionVision™, and Obstacle Image Review」 (2026年10月31日確認)(新しいタブで開きます)
  7. iRobot(米国)「Roomba j7 Robot Vacuum」製品ページ(P.O.O.P.保証の条件) (2026年10月31日確認)(新しいタブで開きます)
  8. iRobot(英国)「Error 6. Roomba® 500 - 900 and e series.」 (2026年10月31日確認)(新しいタブで開きます)
  9. ECOVACS「Why isn't the robot avoiding obstacles?」(2025年9月19日更新) (2026年10月31日確認)(新しいタブで開きます)
  10. ECOVACS「Why is the AIVI 3D module sometimes unable to avoid obstacles?」(2022年4月26日更新) (2026年10月31日確認)(新しいタブで開きます)
  11. ECOVACS「AIVI sometimes fails to recognize obstacles or sometimes it is unable to avoid obstacles?」(2023年2月17日更新) (2026年10月31日確認)(新しいタブで開きます)
  12. Vacuum Wars「How Vacuum Wars Tests Robot Vacuums」(2025年11月4日更新) (2026年10月31日確認)(新しいタブで開きます)
  13. Vacuum Wars「Vacuum Wars Names Roborock Saros 10R Best Obstacle Avoidance Robot Vacuum of Mid-2025」(2026年9月18日更新) (2026年10月31日確認)(新しいタブで開きます)
  14. 読者の声の例:価格.com クチコミ掲示板「質問です コードは巻き込みますか」(2022年7月)(新しいタブで開きます)

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