スウェーデンのTeenage Engineeringが生み出した「TP-7」は、単なるポータブルレコーダーではなく、オーディオ録音の未来を再定義するデバイスだ。フィールドレコーディング、ポッドキャスト、インタビュー、メモ録音、さらにはライブパフォーマンスの記録まで、幅広い用途に対応する。ミニマルながら洗練されたデザイン、直感的な操作性、高品質な録音機能を兼ね備え、クリエイターやプロフェッショナルにとって理想的なツールとなっている。

本体サイズは96mm x 68mm x 16mmと極めてコンパクトでありながら、内部には128GBのストレージと7時間稼働可能な充電式バッテリーを搭載。24bit/96kHzのUSBオーディオインターフェース機能を持ち、スマートフォンやPCと接続して録音デバイスとしても使用できる。さらに、スマホアプリと連携することで、自動文字起こし機能を活用できるという点も特筆すべきポイントだ。

TP-7の特徴

デザインと操作性

TP-7のデザインは、Teenage Engineeringらしい工業的な美しさを備えながら、細部にまで使いやすさが追求されている。ミニマルながら独創的な外観は、手に取るだけでワクワクさせるものがある。本体はアルミニウム製で、手のひらにすっぽり収まるサイズ感。ボタンやダイヤルの配置も計算されており、直感的な操作が可能だ。

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電動テープリール:アナログ感覚の操作性

TP-7の最大の特徴は、中央に配置された電動テープリールだ。このリールはただの装飾ではなく、録音・再生・早送り・巻き戻しといった操作を物理的に体感できる仕組みになっている。内部には高感度のホールセンサーとボールベアリング付きブラシモーターが組み込まれており、リールを軽く指で回すだけで、録音データのナビゲーションが可能。視覚的なフィードバックも得られるため、直感的に録音の状況を把握できる。

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多彩なオーディオ入出力

TP-7には、3系統のステレオ2ウェイジャックが搭載されている。これにより、外部マイクやヘッドフォン、ヘッドセット、さらにはスタジオモニターなどと接続が可能。付属の6.35mm-3.5mmジャックアダプターを使用すれば、より幅広いオーディオ機器と組み合わせることができる。さらに、OP-1 FieldやTX-6といったTeenage Engineeringの他の機材ともスムーズに統合でき、拡張性も抜群だ。

自動文字起こし機能

スマホアプリと連携することで、TP-7は単なるレコーダーを超えた存在となる。録音データをBluetoothまたはUSB経由でスマートフォンに転送し、アプリの「Transcribe」機能を使えば、自動で音声をテキスト化してくれるのだ。現在のところ英語のみ対応しているが、将来的には日本語を含む多言語対応が予定されている。インタビューや会議の議事録作成が劇的に効率化されるため、ジャーナリストやライター、研究者にとっても魅力的な機能だ。

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録音中の瞬時の一時停止機能

TP-7には「オフレコ」機能とも言える便利な操作がある。インタビューや会話の最中に、録音を一時停止したい瞬間があるだろう。例えば、相手が「ここはオフレコで」と言った場合、録音停止ボタンを探して押すよりも、スムーズに対応したい。TP-7では、リールに軽く指を当てるだけで録音が一時停止される。この動作は自然な流れの中で行えるため、会話のテンポを損なわずに収録できる。

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バッテリーとストレージ

TP-7は、7時間の連続使用が可能な充電式バッテリーを搭載している。USB-C端子で充電できるため、モバイルバッテリーと組み合わせて長時間の使用にも対応。さらに、128GBの内蔵ストレージを備え、1日5分の録音を20年間保存できる計算となる。フィールドレコーディングやポッドキャスト制作において、ストレージ不足を気にする必要がないのは大きな利点だ。

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TP-7_11多様な録音シナリオに対応

TP-7は、さまざまな録音シナリオに適応する万能レコーダーである。

  • インタビュー:スマホ録音とは異なり、通知の影響を受けずにインタビューに集中できる。
  • ポッドキャスト:スタジオでも野外でも、高音質でポッドキャストの収録が可能。最大3本の外部マイクを接続できる。
  • ボイスメモ:思いついたアイデアを即座に録音し、アプリでテキスト化できるため、クリエイターにとって強力なツールとなる。
  • フィールドレコーディング:高性能マイクと7時間のバッテリー駆動により、外出先でも高品質な録音を実現。
  • ライブパフォーマンス:演奏の記録だけでなく、ターンテーブルのように使用し、ライブセットをミキシングすることも可能。

将来性

TP-7は、単なる録音機を超えたポテンシャルを秘めたデバイスだ。特に、音声データをテキスト化する機能は、今後のアップデートで日本語を含む多言語対応が期待されている。これにより、ビジネスシーンや学術分野でもより幅広く活用される可能性が高い。

また、Teenage Engineeringの他の製品との連携によって、TP-7はより強力なツールとなる。例えば、TX-6ミキサーと組み合わせてライブパフォーマンスの記録・編集を行ったり、OP-1 Fieldと接続してサウンドデザインの素材を収集したりと、用途の拡張性は計り知れない。

デザインと機能性、そして独創的なアプローチを融合させたTP-7は、録音機器の新たなスタンダードを築く存在となるだろう。シンプルでありながら奥深い操作性、そして細部まで計算された設計が、多くのクリエイターやオーディオ愛好家にとって欠かせないツールとなることは間違いない。