アメリカの名門大学、ハーバード大学やMIT(マサチューセッツ工科大学)で、これまで考えられなかった現象が静かに、しかし確実に広がっている。「AIの進化が早すぎて、大学にいる時間すら惜しい」。そんな切実な理由から、若い学生たちが次々と退学し、AIスタートアップや安全研究に飛び込んでいるのだ。

Nỗi sợ hãi về siêu AI khiến sinh viên Harvard, MIT bỏ học - 1

AGIへの期待と恐怖が引き金に

彼らを動かすのはただの就職不安ではない。「AGI(汎用人工知能)」が人類に取って代わるのではないかという期待と恐怖が背後にある。
ニューヨーク・タイムズの報道によれば、わずか10代後半から20歳前後の学生が「今動かないと世界の未来を失う」と考え、続々とシリコンバレーに集結しているという。彼らの合言葉はシンプルだ。「AIは待ってくれない」

その一方で、AIが人類に与えるリスクに危機感を覚えた学生たちは、退学してAI安全分野の研究や非営利団体に身を投じている。彼らは「間違った一歩が全人類を破滅に導く」と信じ、研究を通じてAIの「アライメント(人間の価値観に従う仕組み)」を実現しようとしているのだ。

「卒業まで生きられるか分からない」

象徴的な人物の一人がMITの学生、アリス・ブレアだ。彼女は入学当初、AI倫理の研究に携わっていたが、わずか1年で永久休学を決断。AI安全センターで技術ライターとして活動を始めた。彼女の言葉は重い。
「今のAGI開発の道筋は、人類の絶滅に直結する可能性が高い」

彼女だけではない。ハーバードの学生アダム・カウフマンも休学を選び、Redwood Researchで「欺瞞的AI」の研究に従事。さらには彼の兄弟や恋人までもが大学を離れ、OpenAIで働いているという。これらは単なる個人の選択ではなく、「集団的な退学」という社会現象になりつつある。

学位の価値が揺らぐ時代

かつては成功の切符と見なされていた学位が、今や「ChatGPT以前の記念品」と揶揄されている。ハーバードの調査では、半数以上の学生が「2030年までに自分の職業がAIに奪われる」と不安を抱えている。大学の授業が最新のAI進展に追いつけない以上、時間を教室で過ごす意味を見失うのも当然かもしれない。

経済的背景もこれを後押しする。JPモルガンの報告によれば、次の景気後退期にAI導入が一気に加速し、非定型的な知的労働が大量に代替される可能性が高いという。すでに製造業が自動化の波にのまれたように、ホワイトカラーの世界も近い将来大きく変わるだろう。

賛否両論、しかし止まらない潮流

もちろん、全員がこの「退学ムーブメント」に賛同しているわけではない。Metaのヤン・ルカンは「大規模言語モデルの知能は猫にも及ばない」と強調し、AGIの危険を過剰視する声に反論している。Gary Marcusは「2025年末までに人間を超えるAGIは現れない」と断言し、イーロン・マスクと賭けまで交わしている。

それでも現場の学生にとって、「未来の職場で自分の居場所があるのか」という不安は消えない。SNS上では「#AIDropout」というタグが拡散し、「最も聡明な世代が大学を離れ、AGIを導く役割を担う」という熱い宣言が飛び交っている。

大学も必死の引き留め

こうした事態に対し、大学側も黙ってはいない。ハーバードはAI倫理の新講座を立ち上げ、MITはAI生産性を賛美する論文を急遽撤回するなど、学生を留めようと必死だ。しかし、世界があまりに急速に変わる中、「教室に座っている暇はない」と感じる学生を引き止めるのは難しい。

スタートアップ界の重鎮ポール・グレアムも「大学を捨ててまで起業するな」と警鐘を鳴らしているが、その声がどれほど届いているかは疑わしい。今年初め、たった一篇の論文で投資を勝ち取った18歳の起業家が退学した例は、むしろ学生たちの背中を押してしまっている。

結論 ― 学位か、未来か

結局のところ、このムーブメントは単なる「退学ブーム」ではなく、AI時代における教育とキャリアの価値観の根本的転換を象徴している。
AGIへの恐怖と期待、そして就職不安と使命感。その入り混じった感情が、学生たちを大学から押し出し、未知のフロンティアへと駆り立てているのだ。

アリス・ブレアの言葉が、この世代の心境を代弁しているだろう。
「AIが人類を脅かすのを防ぐことこそ、私たち世代の決定的な課題だ」