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Kohlerのトイレ用AIカメラ「Dekoda」とは:何を測るか、暗号化をめぐるその後

便器の縁に付けたカメラで、水分補給や腸の状態、血液の有無を記録する。2025年10月に米国で発売されたKohlerの「Dekoda」を、発売1年後の情報で見直しました。

Modern-G 編集部更新 約7分で読めます
白い便器の断面の模式図。縁に小さな装置が付き、内側へ淡い水色の光が伸び、点線がスマートフォンの輪郭と錠前の印へつながる抽象的なイラスト
イラスト:Modern-G

米国の住宅設備メーカーKohler(コーラー)は2025年10月20日、新部門Kohler Healthの最初の製品として、便器の縁に取り付けるカメラ付きの装置「Dekoda(デコーダ)」を発表しました。排せつ物を撮影・分析し、水分補給の状態や腸の傾向をアプリで記録する製品です。

Modern-Gは2025年10月28日にこの製品を紹介しました。発売から1年たった2026年10月29日に情報を見直すと、価格は下がり、「エンドツーエンド暗号化」という説明は指摘を受けて改められていました。この記事では、Dekodaが何を測るのか、日本で使えるのか、何が問題になったのかを、公式発表と報道に沿って整理します。Modern-GはDekodaを入手しておらず、使用した結果は書いていません。

Dekodaは何を測るのか

Kohler Healthの発表によると、Dekodaは光学センサーと機械学習を使い、水分補給の状態、腸の状態、便器の中の血液の有無を記録します。結果はスマートフォンの「Kohler Health」アプリに表示され、個人の基準値をつくって変化の傾向を見せる仕組みです。

Kohlerの仕様書では、本体はバッテリー式で、充電用のアダプターとケーブル、取り付け用のパッド、壁に付けるブラケット、指紋で使用者を見分ける「認証リモコン」が付属します。対応するのは「ほとんどのKOHLER製の白い便器」とされ、他社製や色付きの便器では使えない場合があります。

旧記事は、尿や便の「流速、含水率」まで解析し、「炎症の可能性を自動で診断」すると書いていました。Kohlerの発表にそうした項目や診断の説明は見当たりません。発表では、日々の傾向を知って生活の判断に役立てる製品と位置づけられています。

価格と、日本で使えるか

発売時の価格は599ドルで、Engadget(2025年10月20日)は翌日から出荷の予定と伝えていました。2026年10月15日のKohler Healthの発表では、価格は449ドルになっています。

本体のほかに、アプリの会員登録が必要です(Kohlerの仕様書)。レビューサイトReviewed(2026年8月10日更新)によると、個人なら月6.99ドルか年70ドル、18歳以上の6人まで登録できる家族プランなら月12.99ドルか年130ドルです。

日本での発売は、2026年10月時点で発表されていません。2026年10月15日の発表で案内されている販売先はKohler.comとKohlerHealth.comで、仕様書が対応をうたうのも「ほとんどのKOHLER製の白い便器」です。日本で正規に買う手段や、日本の便器での動作を確かめる情報はありません。

「エンドツーエンド暗号化」をめぐる指摘

発売時、Kohler Healthはデータを「エンドツーエンド暗号化」で守ると説明していました。この表現に疑問を示したのが、セキュリティ研究者のSimon Fondrie-Teitler氏です。2025年12月2日のブログで、Kohlerのプライバシー窓口からの回答(データは同社のシステムで復号・処理される)とプライバシーポリシーをもとに、Kohlerは利用者のデータや画像にアクセスできると指摘しました。

Dekodaのデータの流れを示す図。本体から会社のサーバーへ、サーバーからアプリへデータが送られる。通信中はTLS 1.3、保存中はAES-256で暗号化されるが、サーバーでは会社が復号できる。本来のエンドツーエンド暗号化なら、端末どうしだけが読める。
Dekodaの暗号化の範囲(模式図)。Kohler Healthの発表(2026年10月15日)、Simon Fondrie-Teitler氏のブログ(2025年12月2日)、TechCrunch(2025年12月3日)によるModern-G作図

一般にエンドツーエンド暗号化は、送る人と受け取る人の端末だけがデータを読める方式を指し、サービスを運営する会社も中身を見られません。TechCrunch(2025年12月3日)によると、Kohlerの規制担当責任者は、メッセージアプリのような使い方とは違い、利用者(送り手)とKohler Health(受け手)のあいだの暗号化という意味でこの言葉を使ったと説明しました。

Kohlerはまた、同意した利用者のデータだけを、個人を特定できない形にしてアルゴリズムの学習に使うと述べています。同意は任意です。TechCrunchによると、Kohlerは記事の公開後にウェブサイトから「エンドツーエンド暗号化」の表現を外し、「保存時と通信時のデータ暗号化」と書き改めました。2026年10月15日の発表では、説明は「保存時はAES-256、通信時はTLS 1.3で暗号化」に変わり、利用者が記録を確認したり完全に削除したりできると説明されています。

編集部としては、暗号化の方式そのものより、会社のサーバーで読める形のデータがあること、それが学習に使われる条件を確かめられることが、この種の製品を選ぶうえでの要点だと考えます。旧記事が書いていた「HIPAA(米国の医療情報保護法)に準拠」という説明は、今回確認できた資料には見当たりませんでした。

日本で買えるのはTOTOの「便スキャン」

日本では、TOTOが2025年8月1日に、便の状態を測る「便スキャン」を搭載したウォシュレット一体形便器「ネオレストLS-W」「ネオレストAS-W」を発売しています。発売時の希望小売価格は税込542,300円からと493,900円からです。

製品測り方本体価格利用料日本での販売
Kohler Dekoda便器の縁に付けた光学センサー449ドル月6.99ドルか年70ドル(個人)なし
Throne One便器の縁に付けたカメラ399.99ドル月6ドルか年70ドルなし(米国のみ)
TOTO 便スキャン便器一体のLEDセンサー49万3,900円から(発売時、税込)アプリは無料あり

TOTOによると、ウォシュレットのノズルの出口の隣にあるセンサーがLEDの光を落ちていく便に当て、反射した光から形・色・量を測ります。形は英ブリストル大学の便性状スケールを参考にTOTOが作った方法で7タイプに分け、量と色はそれぞれ3段階で示します。結果はBluetoothで無料のアプリ「TOTOウェルネス」に転送され、週や月の傾向が表示されます。1台に6人まで登録できます。

TOTOは、この製品とアプリが医療上の助言や診断を目的としたものではないと明記しています。便器ごと買い替える製品なので、Dekodaのような後付けの装置とは導入の手間も費用も大きく違います。

「トイレで健康を測る」研究と、米国の新興企業

便器で健康を測る発想は新しくありません。スタンフォード大学のSanjiv Sam Gambhir氏の研究室は2020年4月、尿の試験紙の色の読み取り、尿の勢いの計測、深層学習による便の分類を組み合わせた装置を、学術誌Nature Biomedical Engineeringに発表しました。使用者の識別には指紋と、肛門の特徴の画像を使う方式を提案しています。Gambhir氏は2020年に亡くなりました。

米テキサス州オースティンのThroneは、便器の縁に付けるカメラ「Throne One」を開発した新興企業で、自転車ロードレースの元選手ランス・アームストロング氏も出資者に名を連ねています。旧記事は「2026年1月の製品化を目指す」と書いていました。Engadget(2026年1月7日)は2月の出荷予定と伝えており、2026年10月時点の公式FAQでは本体399.99ドル、会員は月6ドルか年70ドル、販売は米国のみです。Throneは自社製品を医療機器ではなく一般的なウェルネス製品と説明しています。

旧記事は「腸内には人体の細胞数を上回る1,000兆以上の細菌」と書いていましたが、2016年の研究(Sender氏ら)は、体重70kgの男性の細菌を約38兆、人の細胞を約30兆と推計し、比率はほぼ1対1としています。

その後の動き(2026年10月時点)

時期出来事
2025年10月20日Kohler HealthがDekodaを発表、599ドル、翌日から出荷予定と報道
2025年12月2日研究者が「エンドツーエンド暗号化」の説明は実態と違うと指摘
2025年12月3日Kohlerが言葉の意味を説明、学習は同意したデータのみと回答。その後、サイトの表現を変更
2026年1月7日Engadgetが、Throneの出荷は2月の予定と報道
2026年10月15日発売1年の発表。価格は449ドル、暗号化の説明は「保存時AES-256、通信時TLS 1.3」に

健康を測るガジェット全般はヘルスケアガジェットの選び方、家の中のカメラとプライバシーの考え方は見守りカメラの選び方、カメラ付きの機器への抵抗感はMeta製スマートグラスへの拒否感、海外発のAI製品を日本で使うときの注意はAIおもちゃFuzozoの例も参考になります。

Sources

  1. PR Newswire(Kohler Health)「Kohler Health Marks One-Year Anniversary of Dekoda with Acclaimed Industry Recognition for Innovation and Design」2026-10-15 (2026-10-29確認)(新しいタブで開きます)
  2. HLTH(Kohler Co.の発表の転載)「Kohler Co. Launches Kohler Health」2025-10-20 (2026-10-29確認)(新しいタブで開きます)
  3. Kohler「Dekoda」仕様書(K-41480) (2026-10-29確認)(新しいタブで開きます)
  4. Engadget「Kohler's Dekoda is a $600 camera for your toilet」2025-10-20 (2026-10-29確認)(新しいタブで開きます)
  5. Reviewed「Kohler Dekoda review」 (2026-10-29確認)(新しいタブで開きます)
  6. Simon Fondrie-Teitler「Kohler Can Access Data and Pictures from Toilet Camera It Describes as "End-to-End Encrypted"」2025-12-02 (2026-10-29確認)(新しいタブで開きます)
  7. TechCrunch「'End-to-end encrypted' smart toilet camera is not actually end-to-end encrypted」2025-12-03 (2026-10-29確認)(新しいタブで開きます)
  8. TOTO ニュースリリース「ネオレストLS-W/AS-W 8月1日(金)発売」2025-05-28 (2026-10-29確認)(新しいタブで開きます)
  9. TOTO ニュースリリースPDF(価格) (2026-10-29確認)(新しいタブで開きます)
  10. Throne「Throne FAQs」 (2026-10-29確認)(新しいタブで開きます)
  11. IBTimes UK「AI Startup That Analyses Your Waste with In-Toilet Camera Bags Cheque After Lance Armstrong Tries It」2025-05-31 (2026-10-29確認)(新しいタブで開きます)
  12. Engadget「Throne, from the co-founder of Whoop, uses computer vision to study your poop」2026-01-07 (2026-10-29確認)(新しいタブで開きます)
  13. TechCrunch「Throne's toilet camera takes pictures of your poop」2024-10-20 (2026-10-29確認)(新しいタブで開きます)
  14. Stanford Medicine「'Smart toilet' monitors for signs of disease」2020-04-06 (2026-10-29確認)(新しいタブで開きます)
  15. PubMed「A mountable toilet system for personalized health monitoring via the analysis of excreta」Nature Biomedical Engineering 2020 (2026-10-29確認)(新しいタブで開きます)
  16. PubMed「Revised Estimates for the Number of Human and Bacteria Cells in the Body」2016 (2026-10-29確認)(新しいタブで開きます)

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