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AI歌手Xania Monet(ザニア・モネ)とは? 2025年秋の契約とチャート

歌詞は人が書き、歌声と伴奏はAIが作る。2025年秋、数百万ドル規模の契約とBillboardのラジオ系チャート入りで話題になったXania Monetを、一次報道とチャートの記録から確かめ直しました。

Modern-G 編集部更新 約11分で読めます
線で描いたなめらかな音の波形の上に、一本のペン先が斜めに重なり、波形の右端に小さな光の点が一つ添えられた、抽象的なイラスト
イラスト:Modern-G

Xania Monet(ザニア・モネ)は、米ミシシッピ州の詩人Telisha "Nikki" Jonesさんが、音楽生成AI「Suno」で歌声と伴奏を作っているR&B・ゴスペルの「AIアーティスト」です。2025年9月にHallwood Mediaとの数百万ドル規模の契約が報じられ、11月には、AIの歌い手として知られている限り初めてBillboardのラジオ系チャートに入ったことで、大きな議論になりました。

この記事は、2025年11月に公開した記事を、Billboardなどの一次報道とチャートの記録に当たり直して書き改めたものです。旧記事の見出しにあった「人間の声を超える」かどうかは聴き手の評価の問題で、事実として確かめられるものではありません。ここでは、誰がどう作っているのか、どんな曲があるのか、何が記録として残ったのか、そしてその後の1年で業界がどう動いたのかを整理します。

Xania Monetとは:歌詞は人、歌声と伴奏はAI

Xania Monetを作ったのは、ミシシッピ州オリーブブランチでデザインスタジオを営むTelisha "Nikki" Jonesさんです。Billboardが2025年9月16日に報じた時点で31歳。教会で歌って育ったものの、マネージャーのRomel Murphy氏によれば、本人はXaniaのような「ボーカルの怪物」ではありません。

CBSの番組「CBS Mornings」(2025年11月5日放送)で、Jonesさんは制作の流れをこう説明しています。書きためた詩から曲にしたいものを選び、歌詞をAIの音楽生成アプリに入れ、「スローテンポのR&B、ソウルフルな女性ボーカル、軽いギターと重いドラム」といった指示を加えて生成する。歌詞は「100%私」で、歌声と伴奏はAIが作る、という分担です。

Billboardによると、制作にはSunoのほかに生の要素も組み合わせていて、Jonesさんは作詞と制作のクレジットをすべて自分のものとしています。Murphy氏は、歌詞の9割はJonesさん自身の実話、残りは友人や地域の人の話がもとだと語りました。代表曲「How Was I Supposed to Know?」は、8歳で父親を亡くした経験から生まれた曲だそうです。

代表曲とアルバム

「xania monet 曲」と探している人のために、Apple Musicの配信情報(2026年10月23日確認)から主な作品をまとめます。

  • アルバム『Unfolded』(2025年8月8日、24曲):話題になった「How Was I Supposed to Know?」、ゴスペル曲「Let Go, Let God」、「This Ain't No Tryout」「I asked for so little」などを収録
  • EP『Pieces Left Behind』(2025年9月3日、7曲):収録曲「If Only You Knew」がHot Gospel Songsに初登場15位(2025年11月1日付)
  • シングル「Say My Name With Respect」(2025年12月19日):批判への返答として出した曲
  • アルバム『The Things I Didn't Say』(2026年1月9日、21曲):上の「Say My Name With Respect」も収録
  • シングル「Going Back To The Church」(2026年10月16日)と「Devil In Disguise」(2026年10月18日)

配信の権利表記は「Hallwood, under exclusive license from TMJInc」で、Hallwoodが独占ライセンスを受けて出している形です。

2025年秋に何が起きたのか:契約とBillboardチャート

順番に並べると、契約の報道が先で、ラジオ系チャート入りはそのおよそ1か月半後でした。旧記事はラジオ系チャートの後にHot R&B Songsで急上昇したと書いていましたが、実際は逆の順序です。

2025年秋のXania Monetの動きを日付順に並べた図。9月16日にHallwood Mediaとの契約が報じられ、9月20日付でR&B Digital Song Sales 1位、9月27日付でHot R&B Songs 20位、10月25日付でHot Gospel Songs 3位、11月1日付でAdult R&B Airplay 30位に初登場した。ラジオ系チャートに入ったのはAIの歌い手として初めてとされる。
2025年秋の契約とBillboardチャートの記録(チャートは付の日付)。Billboardの報道とチャートページによるModern-G作図

契約について、Billboardは2025年9月16日、複数のレーベルによる入札が最高300万ドルに達したと関係者の話として伝え、元Interscope幹部のNeil Jacobson氏が率いるHallwood Mediaが「数百万ドル規模」の契約で獲得したと報じました。契約額そのものは公表されていません。メジャー系の複数のレーベルも交渉していたものの、Sunoを相手取った自社の著作権訴訟を理由に手を引いた、とBillboardは伝えています。

チャートの記録は、Billboardの記事とチャートページで確認できたものが次のとおりです(チャートの日付は「付」)。

チャート曲順位日付
R&B Digital Song SalesHow Was I Supposed to Know?初登場1位2025年9月20日付
Hot Gospel SongsLet Go, Let God初登場21位→最高3位9月20日付→10月25日付
Hot R&B SongsHow Was I Supposed to Know?初登場20位9月27日付
Adult R&B AirplayHow Was I Supposed to Know?初登場30位11月1日付
Hot Gospel SongsIf Only You Knew初登場15位→最高14位11月1日付→12月6日付

Adult R&B Airplayは、米国の大人向けR&Bラジオ局での放送回数で決まるチャートです。Billboardは、AIによるアーティストがBillboardのラジオ系チャートに入った「知られている限り初めての例」としました。集計週に放送した局は57局中15局で、規模の小さいチャートの最下位からのスタートでした。全ジャンルのHot 100には、確認した4週(2025年9月20日付・27日付、10月4日付、11月1日付)のいずれにも入っていません。

聴かれた量の目安として、Billboardは2025年11月4日の記事で、カタログ全体の米国の公式ストリーミングを4440万回としています。旧記事の「Spotifyで4400万回」は、この数字を言い換えたものとみられます(Spotifyだけの数字ではありません)。

批判と、制作側の言い分

反発も大きいものでした。Billboardは、SZAとKehlaniを反対の声の代表格として挙げています。Kehlaniは2025年9月、名前を出さずに「数百万ドルの契約を結んだばかりのAIのR&Bアーティストがいる……そして、その人は何の作業もしていない」「この世の何ものも、誰も、私に対してAIを正当化することはできない。私はそれを尊重しない」とSNSで語りました。

Jonesさんの側は、CBSの取材に「AIは新しい時代の道具で、楽器のように使っている」と答え、Kehlaniの音楽はいまも毎日聴いていると話しています。Murphy氏はBillboardに「曲を聴いて、歌詞を聴いて、それから判断してほしい」と語りました。そして12月19日、Xania Monetはシングル「Say My Name With Respect」で、「あなたたちは私を本物のアーティストじゃないと言い続けるけれど、私の歌はそれでも誰かの夜を変えている」と返しました。

同じ秋には、AIで作られた女優「ティリー・ノーウッド」をめぐってもハリウッドで同じ種類の議論が起きていました(AI女優をめぐる論争の記事)。「AIが作ったと知った瞬間に評価が変わる」という感覚については、モネの『睡蓮』を題材にしたエッセイも参考になります。

権利はどうなっているのか

ここは法的助言ではなく、公開されている公的な見解と規約の整理です。個別の判断は専門家に相談してください。

Xania Monetの曲には、少なくとも3つの層があります。人が書いた歌詞、AIが生成した歌声と伴奏、そしてそれを選んで組み立てる人の作業です。

Xania Monetの曲のどこに人の創作があるかを示した模式図。歌詞はJonesさんが書いたもので、人の著作物として保護されうる。歌声と伴奏はSunoが生成したもので、指示を入力しただけでは米国では著作権の保護を受けない。人が出力を選び、編集し、配置した部分は人の寄与として認められうる。
米国著作権局の考え方(2025年1月)に沿って、人の創作がどこにあるかを整理した模式図。個別の曲の判断ではありませんModern-G作図

米国著作権局は2025年1月29日に公表した報告書(第2部)で、生成AIの出力が著作権で保護されるのは、人が十分な表現の要素を決めた場合に限られるとしました。人の書いた作品が出力の中に認められる場合や、人が出力を創作的に配置・修正した場合は含まれますが、指示(プロンプト)を入力しただけでは足りません。AIを補助に使ったこと自体は、保護の妨げにならないとも述べています。

この考え方に沿えば、Jonesさんの歌詞は人の著作物として扱われうる一方、Sunoが生成した歌声や伴奏そのものは、指示を入れただけなら保護の対象になりにくい、という整理になります。個々の曲がどう判断されるかは、登録の審査や裁判で決まります。

規約の上の「持ち主」は、また別の話です。Sunoのヘルプは、有料のPro・Premierプランで作った曲は利用者のもの、無料のBasicプランで作った曲はSunoのもので非商用に限る、と説明しています。同時に、米国の著作権法が保護するのは人の創作物で、100% AIで作った音楽は保護の対象にならないとも書いています。契約上の権利と著作権の保護は、同じではありません。

もう一つの論点が、AIの学習データです。ユニバーサル、ソニー、ワーナーの大手3社は2024年6月、Sunoが許諾なく録音物を学習に使ったとして提訴しました。Sunoはフェアユース(米国の公正利用)だと反論しています。これはJonesさんの曲の権利とは別に、使っている道具そのものをめぐる争いです。AIと著作権の訴訟は画像や映像でも起きていて、ディズニーとユニバーサルがMidjourneyを訴えた件とも地続きです。

最後に、声のなりすましです。Xania Monetが実在の歌手の声をまねたという指摘は、確認した報道には見当たりません。ただ同じ時期には、実在の歌手の名義にAIの偽の曲が載る被害が続きました。

英国のフォーク歌手Emily Portmanさんの配信ページには身に覚えのないアルバム『Orca』が登録され、1989年に亡くなったBlaze Foleyのページにも別人がAIの曲を載せ、Spotifyは「欺瞞的なコンテンツ」の規約違反として削除しました。Spotifyは2025年9月25日、本人が認めた場合を除いて声のなりすましを認めない方針を打ち出しています。

日本では、文化庁が2024年3月に「AIと著作権に関する考え方について」を取りまとめています。日本で同じような曲を作って配信する場合は、まずこの資料と、使うAIサービスの規約を確かめるのが出発点です。

その後の動き(2026年10月時点)

Xania Monetは活動を続けていて、「How Was I Supposed to Know?」はAdult R&B Airplayで2026年1月24日付に最高24位まで上がり、2月7日付の時点で通算10週チャートに入っていました(Billboardのチャートページ)。2026年10月には新しいシングルも2曲出ています。

業界側の主な動きは次のとおりです。

日付動き
2025年10月29日ユニバーサルがUdioと和解。許諾済みの音源で学習した新サービスを2026年に始めると発表
2025年11月AIのカントリー曲、Breaking Rust「Walk My Walk」がCountry Digital Song Salesで1位(11月15日付で2週目)
2025年11月19日・25日ワーナーがUdio、続いてSunoと和解・ライセンス契約。Sunoは2026年に許諾モデルへ移行すると説明
2026年1月Bandcampが、生成AIで全部または「相当部分」を作った音楽の配信を禁止
2026年7月29日〜30日大手3社などが、AIを使った録音物がチャートに入る条件の原則を公表。IFPIが自ら運営する公式チャートに適用
2026年7月31日ドイツのミュンヘン地裁が、GEMAの訴えでSunoの著作権侵害を認める(一審)
2026年8月25日Billboardが、チャートと記事でAIの使用を明示する方針を表明
2026年9月18日ユニバーサルとソニーが、Sunoの新モデルv6も対象に2件目の訴訟。2024年の訴訟も係属中

IFPIの原則は、使ったAIサービスが正規の許諾を受けて合法であること、録音が「実質的に人の手で作られた」ものであること、再生数の不正が疑われないことなどを条件にしています。ただしこれはIFPIが運営するチャートと、今後採用する各国のチャートの話で、米国のBillboardの基準ではありません。Billboardは2026年8月の時点で、AIの使用を明示するとしつつ、AI作品をチャートから外すとは言っていません。Xania MonetのようなケースがIFPIの基準でどう判定されるかも、公表されていません。

レーベルのチャート原則が実際にどう適用されるかは、これからの運用を見ていく必要があります。

まとめ

Xania Monetは、人が書いた歌詞をAIで歌にしたプロジェクトで、2025年秋に契約とBillboardのラジオ系チャート入りで注目を集めました。記録として確かなのは、小さなラジオ系チャートへの初登場と、R&Bのダウンロード売上チャートでの1位です。「人間の声を超えた」という評価は、記録とは別の話です。

曲を聴いてみたい人は、まず『Unfolded』の「How Was I Supposed to Know?」から。権利の話が気になる人は、「歌詞は人の創作、AIの出力は指示だけでは保護されない」という米国の考え方と、使うサービスの規約を分けて考えると整理しやすくなります。AIを作曲の道具として使う流れは機材にも広がっていて、AI音楽ワークステーションの記事も一つの例です。

Sources

  1. Billboard「AI Artist Xania Monet Climbs the Charts — And Signs a Multimillion-Dollar Record Deal」(2025-09-16、Hannah Karp) (2026-10-23確認)(新しいタブで開きます)
  2. Billboard「Kehlani Slams AI Artist's $3 Million Record Deal: 'I Don't Respect It'」(2025-09-19、Hannah Dailey) (2026-10-23確認)(新しいタブで開きます)
  3. Billboard「AI Artist Xania Monet: How Much Money Have Her Songs Made?」(2025-09-24、Elizabeth Dilts Marshall) (2026-10-23確認)(新しいタブで開きます)
  4. Billboard「AI Artist Xania Monet Debuts on Adult R&B Airplay — a Radio Chart Breakthrough」(2025-11-03、Trevor Anderson) (2026-10-23確認)(新しいタブで開きます)
  5. Billboard「How Many AI Artists Have Debuted on Billboard's Charts?」(2025-11-04、Xander Zellner) (2026-10-23確認)(新しいタブで開きます)
  6. Billboard「Adult R&B Airplay」チャート(2025-11-01付、2026-01-24付、2026-02-07付) (2026-10-23確認)(新しいタブで開きます)
  7. Billboard「Hot R&B Songs」チャート(2025-09-27付) (2026-10-23確認)(新しいタブで開きます)
  8. Billboard「Hot Gospel Songs」チャート(2025-09-20付、2025-10-25付) (2026-10-23確認)(新しいタブで開きます)
  9. Billboard「Hot Gospel Songs」チャート(2025-11-01付) (2026-10-23確認)(新しいタブで開きます)
  10. CBS News「Meet the woman behind chart-topping AI artist Xania Monet: "I look at her as a real person"」(2025-11-05) (2026-10-23確認)(新しいタブで開きます)
  11. Billboard「Xania Monet Replies to Kehlani on New Song 'Say My Name With Respect'」(2025-12-19、Michael Saponara) (2026-10-23確認)(新しいタブで開きます)
  12. Apple Music「Xania Monet」の配信作品(iTunes Search APIで取得) (2026-10-23確認)(新しいタブで開きます)
  13. U.S. Copyright Office「Copyright Office Releases Part 2 of Artificial Intelligence Report」(NewsNet 1060、2025-01-29) (2026-10-23確認)(新しいタブで開きます)
  14. Suno Help Center「Do I have the copyrights to songs I made?」 (2026-10-23確認)(新しいタブで開きます)
  15. Spotify「Spotify Strengthens AI Protections for Artists, Songwriters, and Producers」(2025-09-25、2026年追記) (2026-10-23確認)(新しいタブで開きます)
  16. MusicTech「Spotify posting AI-generated songs of dead artists without permission, new report reveals」(2025-07-22、Crystal Koe) (2026-10-23確認)(新しいタブで開きます)
  17. Digital Trends「After the Velvet Sundown snafu, Spotify lands in another AI tangle」(2025-08-25、BBC Newsの報道を紹介) (2026-10-23確認)(新しいタブで開きます)
  18. 文化庁「AIと著作権について」(「AIと著作権に関する考え方について」2024-03-15) (2026-10-23確認)(新しいタブで開きます)
  19. Universal Music Group「Universal Music Group and Udio Announce Udio's First Strategic Agreements for New Licensed AI Music Creation Platform」(2025-10-29) (2026-10-23確認)(新しいタブで開きます)
  20. Billboard「Suno & Warner Music Sign AI Licensing Deal, Settle Lawsuit」(2025-11-25、Kristin Robinson) (2026-10-23確認)(新しいタブで開きます)
  21. Billboard「AI Artists Breaking Rust & More Hit Country Music Chart: Reactions」(2025-11-13、Melinda Newman) (2026-10-23確認)(新しいタブで開きます)
  22. Billboard「AI Music Timeline: From 'Fake Drake' to Suno & Udio Label Settlements」(2026-03-17、Kristin Robinson) (2026-10-23確認)(新しいタブで開きます)
  23. IFPI「IFPI Rolls Out Global Principles for the Eligibility of Recordings Developed Using AI in Official Music Charts Worldwide」(2026-07-30) (2026-10-23確認)(新しいタブで開きます)
  24. Music Business Worldwide「Suno loses copyright infringement lawsuit brought by GEMA in Germany」(2026-07-31、Murray Stassen) (2026-10-23確認)(新しいタブで開きます)
  25. Billboard「Billboard Affirms Commitment to Transparency Around AI-Generated Music」(2026-08-25) (2026-10-23確認)(新しいタブで開きます)
  26. Billboard「UMG & Sony Sue Suno In Lawsuit After Launch of New AI Music Model」(2026-09-18、Bill Donahue) (2026-10-23確認)(新しいタブで開きます)

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