27インチのモニターに、6軸ロボットアームを組み合わせた製品が登場しました。ユーザーの位置に合わせて画面が自動で動き、上下・前後の移動はもちろん、横向きから縦向きへの回転にも対応します。少し離れて座れば画面が近づき、椅子にもたれれば、その姿勢に合わせて位置を調整。これまで人がモニターに合わせていたところを、今度はモニターの側が人に合わせてくれるわけです。
その名は「CyboPal ONE」。現在Kickstarterで展開されており、事前予約者向けのSuper Early Bird価格は1,499ドル。日本円で換算すると、およそ25万円のデスクトップデバイスです。
CyboPal ONE デスクトップロボット端末
このロボットアーム、何ができる?
CyboPal ONEの前面には、27インチの4Kディスプレイを搭載しています。解像度は3840×2160、リフレッシュレートは160Hz。ただし、本当に特徴的なのはその背後です。6自由度のロボットアームがディスプレイ全体を支え、ユーザーの位置に応じて画面の高さや距離、角度を自動調整します。
ロボットアームの最大リーチは747mm。背筋を伸ばして座った状態から、椅子に深くもたれた姿勢まで広い範囲をカバーします。顔の位置変化にも4秒以内で反応するとされており、姿勢を変えるたびにモニターアームへ手を伸ばす必要はありません。座る位置が変われば画面も動き、縦画面へ切り替えたいときも、音声やジェスチャーで操作できます。
もはや普通の「電動モニターアーム」と呼ぶには、少し違う存在です。

話しかけても、手を動かしても操作できる
CyboPal ONEには、カメラやマイク、AIインタラクションシステムも搭載されています。音声操作だけでなくジェスチャーにも対応し、画面を近づけたり遠ざけたり、回転させたりできるほか、空中でのスワイプによるスクロール操作も可能です。さらに、机をタップすることでロボットアームの動きを停止させることもできます。
本体下部には「Pauli」と呼ばれる3.5インチの小型ディスプレイを搭載し、ステータスや操作内容を表示します。AIエージェント「Pauli」を通じて、対応アプリの起動、ウィンドウ操作、検索、文章入力など、PC上の一部作業を自然言語で操作することもできます。
ただし、CyboPal ONE自体が独立したパソコンというわけではありません。普段使っているPCと接続して利用するデバイスで、映像入力はUSB-CとHDMI 2.1に対応。Windows、macOS、Linux向けの専用クライアントが用意されています。簡単に言えば、「4Kモニター+6軸ロボットアーム+AIインターフェース」を一体化したデスクトップ端末です。

このロボットアームに、約25万円を払えるか
おそらく、最も意見が分かれそうなのが価格でしょう。27インチの4Kモニターだけなら、もっと安価な選択肢はいくらでもあります。一般的なモニターアームなら、さらに安く手に入ります。一方、CyboPal ONEの事前予約者向け価格は1,499ドル。日本円で換算すると約25万円前後。
もちろん、高くなっている理由は単に「画面が動く」からではありません。カメラや各種センサーでユーザーや周囲の状況を捉え、それに合わせて6軸ロボットアームを制御する必要があります。3D空間センシングによってデスク周囲を認識し、設定した安全範囲の中で経路を判断。衝突検知や安全停止にも対応しています。
さらに、停電などで外部電源が突然失われた場合にも、バックアップ電源を利用して制御された状態でアームを下降させる仕組みを備えています。

カメラの映像はどこへ行く?
AI端末となると、気になるのがプライバシーです。CyboPal ONEでは、顔のトラッキングやジェスチャー認識、空間認識といった視覚処理を端末側で実行します。本体には8コアARMプロセッサ、8GB RAM、128GBストレージを搭載し、視覚AIの主要処理をローカルで行える設計です。
また「Privacy Mode」をオンにすると、カメラとマイクへの電源を物理的に遮断できます。基本的なトラッキングやジェスチャー、プリセット操作などはオフラインでも利用可能。一方、高度なAI機能やクラウドを利用する一部機能にはインターネット接続が必要です。

なぜ彼らは「モニター」に目をつけたのか
CyboPalを手掛けるのは、2023年設立の江蘇細胞壁智能科技です。創業者の彭天放氏は、清華大学精密機器系で博士号を取得しています。同社が目指しているのは、AIをソフトウェアの中だけに閉じ込めるのではなく、ロボット機構を通じて現実のデスク環境そのものへ介入させることです。
CyboPal ONEはCESで公開された後、IFA 2026などでも実機展示が行われました。2026年8月には数億元規模の資金調達を実施し、東方富海がリード投資家となり、聯想之星、天啓資本などが参加しています。調達資金は、CyboPal ONEの量産・出荷と、具身型インタラクションシステムの開発強化に充てられるとしています。
そして現在、いよいよKickstarterを通じて一般ユーザーの手に届こうとしています。

約25万円で買うのは、本当に「モニター」なのか?
厳密に言えば、単なるモニターではありません。購入するのは、一式の「デスクトップロボットシステム」です。ユーザーがどこにいるのかを認識し、声やジェスチャーを受け取り、その動きに合わせて画面そのものを移動させる。さらにAIを介して、PC上の一部操作までサポートします。
自動で最適な位置へ動き、指示を理解し、PCとも連携する。CyboPal ONEは、これまでほとんど「固定された板」だったディスプレイを、能動的に動くコンピューターインターフェースへ変えようとしている製品です。
果たして、この「腕」に約25万円を払う価値があるのか。その答えは、これから市場が出すことになりそうです。



