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ChatGPTで体温計の表示を加工した「仮病」投稿はなぜバズったのか(2025年10月)

36.7度の体温計を、ChatGPTが37.2度に描き換えた。2025年10月にXで広まった「仮病」ネタの実際と、AIで作った画像は見分けられるのかを、当時の投稿とOpenAIの公式情報から確かめ直しました。

Modern-G 編集部更新 約7分で読めます
線で描いた細長い体温計が斜めに置かれ、その周りを点線の四角い枠が囲み、枠の角に小さな光の点が一つ添えられた、抽象的なイラスト
イラスト:Modern-G

36.7度と表示された体温計の写真を、ChatGPTが37.2度に描き換える。2025年10月、そんな画面を載せたX(旧Twitter)の投稿が「仮病」ネタとして大きく広がりました。

この記事は、2025年11月に公開した記事を、元の投稿と報道に当たり直して書き改めたものです。何が投稿され、どう報じられたのか。そして「体温計の画像はAIで作ってもバレないのか」という、いまも検索されている疑問に、OpenAIの公式情報で答えます。

2025年10月、何が投稿されたのか

元になったのは、Xユーザーのマーダン=浪さん(@tagyoulaw_0716)が2025年10月16日の14時ごろに投稿した1枚の画像です。本文は「仮病使うために今これ」の一言だけでした。

画像はChatGPTのアプリ画面のスクリーンショットです。36.7度を示すデジタル体温計の写真をアップロードし、「体温計の表示を37.2°Cに加工して」と依頼すると、ChatGPTが37.2度と表示された体温計の画像を生成した、という一連の流れが1枚に収まっています。加工前と加工後、そして依頼文まで並べて見せている点で、最初から「ネタ」として出された投稿でした。

ITmediaのネットニュース媒体ねとらぼは、2025年11月3日にこの投稿を記事にしました。記事執筆時点で表示は1500万回以上、いいねは18万件超と伝えています。投稿の表示回数は、2026年10月23日時点で約1599万回です。

何がこれほどの反応を呼んだのか。ねとらぼの見出しは「何も信じられなくなる“衝撃の1枚”」、告知の投稿は「仮病もAIで使う時代か……」で、記事も加工後の画像について「一見するだけではあまり違和感がなく、AI技術の怖さを思い知らされます」と書いています。報道と返信が注目したのは、仮病という身近なネタを通して、AIの画像編集の精度が一目で伝わった点でした。

ねとらぼの報道と、Xでの反応

ねとらぼの記事は、生成された画像を「一見するだけではあまり違和感がなく」と評し、AI技術の怖さを感じさせる投稿として紹介しました。記事に引用された返信には「技術の進化すげーっ」と驚く声のほか、「これやろうとしたけどうちのGPT君真面目なのか断られた」という書き込みもあります。

同じ依頼でも、引き受けるとは限らないわけです。2025年11月9日には、別のユーザーが体温計の36.9度を38.4度に加工するよう頼み、「虚偽の証明に使用されるおそれがある」と断られたと投稿しました(Togetterのまとめによる)。

OpenAIの利用ポリシーは、投稿の時点で有効だった版(2025年1月29日発効)で、サービスの出力を詐欺や人を誤認させる目的で共有することを禁じていました。同じ年の10月29日に発効した版でも、欺瞞・詐欺・なりすましへの利用は禁じられています。冗談として画面ごと見せるのと、加工した画像を本物として会社に送るのとでは、意味がまったく違います。

AIで作った「それらしい画像」が本物として出回る問題は、ほかにも起きてきました。写真コンテストの受賞取り消しは日本写真大賞の記事で、AIが描いた架空の観光地にだまされた夫婦の話は「Kuak Skyride」の記事で取り上げています。

AIで加工した体温計の画像は見分けられるのか

「体温計 画像 バレる」と検索する人がいちばん知りたいのは、ここでしょう。結論から言うと、ChatGPTで作った画像には、出どころを示す仕組みが入っています。

OpenAIは2024年から、生成した画像にContent Credentials(C2PA)を付けてきました。C2PAは、どのツールでいつ作られたかといった来歴をファイルに記録する業界標準です。ただしOpenAI自身が、スクリーンショットやファイル変換のような日常的な操作で失われうると説明しています。

そこで2026年5月19日(米国時間)、OpenAIはGoogle DeepMindの電子透かし「SynthID」を、ChatGPT・Codex・APIで作る画像に加えると発表しました。透かしは画像そのものに埋め込まれ、一部の加工やスクリーンショットのあとでも検出できる場合があるとされます。誰でも画像をアップロードして信号の有無を確かめられる検証ページ(openai.com/verify)も、このときプレビューとして公開されました。

OpenAIの画像に付く2つの出どころの信号を比べた図。C2PAメタデータはファイルに付く情報で、スクリーンショットや変換で消えやすい。SynthIDの透かしは画像そのものに埋め込まれ、一部の加工に耐える。openai.com/verifyで有無を確認できる。
OpenAIの画像に付く出どころの信号(模式図)。SynthIDは2026年5月から。内容はOpenAIのヘルプと発表によるModern-G作図

もちろん万能ではありません。OpenAIは、大きな加工で透かしが検出できなくなることがあり、信号が見つからない場合も「AIで作っていない」とは断定しない、と書いています。ただ、見分けがつくかどうか以前に、体温計の写真は体調を証明する書類ではありません。偽の画像を出して発覚すれば、失うのは1日の休み以上のものです。

休みたいときに、偽の画像は要らない

旧記事は、この話題の背景に「日々のストレスや疲れ」があると書いていました。その見立て自体は自然です。ただ、休むために熱をでっち上げる必要は、本来ありません。

年次有給休暇は労働基準法第39条で定められた権利で、福岡県や福島県の労働相談の解説によると、利用目的は問われず、使用者の承認も要りません。雇い入れから6か月継続して勤務し、全労働日の8割以上出勤していれば付与されます。会社が時季を変えられるのは、事業の正常な運営を妨げる場合に限られます。

つまり、有給は理由を言わずに申請できます。ただし福岡県の解説のとおり、原則は事前に取得日を申し出る仕組みです。当日の朝に連絡して休む場合にどう扱われるかは、勤務先の就業規則や運用を確かめておきましょう。体調が悪くて休むなら、体調不良とそのまま伝えれば十分です。困ったときは、都道府県労働局や自治体の労働相談窓口に相談してください。これは一般的な情報で、個別の事情に応じた助言ではありません。

その後の動き(2026年10月時点)

投稿のあとも、ChatGPTの画像編集は精度を上げ続け、それと並行して「AIで作った画像だと分かる」仕組みも強化されてきました。OpenAIのリリースノートと発表で確認できた主な動きです。

日付(米国時間)動き
2025年12月16日新しいChatGPT Images。指示どおりの精密な編集をうたい、生成画像は「My images」に保存
2026年4月21日ChatGPT Images 2.0を全プランに
2026年5月19日画像にSynthID透かしを追加、C2PA準拠に。公開の検証ツールをプレビュー
2026年7月31日音声にもSynthID。検証ツールが音声に対応し、検証用のAPIも提供
2026年9月8日ChatGPT Images 2.5。より精密な編集とテンプレート
2026年10月21日利用ポリシーの改定を発表(2026年11月20日発効)。欺瞞・詐欺への利用の禁止は引き続き明記

元の投稿は2026年10月23日時点でも公開されています。ChatGPTが同じ依頼をいつ引き受け、いつ断るのかについて、OpenAIは個別の基準を公表していません。

AIが不正に使われる例は、仮病よりずっと深刻な形でも報じられています。OpenAIが詐欺拠点のアカウント網を止めた件はこちらのエッセイ、ディープフェイクで人質の映像を捏造する手口はFBIの警告を伝えた記事にまとめました。

まとめ:笑えるネタと、本物として出す画像の距離

2025年10月の投稿は、依頼文ごと画面を見せた「仮病ネタ」で、それが1500万回以上見られたことが、AIの画像編集がどこまで来たかを多くの人に印象づけました。

AIで作った画像かどうかを確かめる手段は、この1年で増えました。冗談で楽しむなら依頼文ごと見せる、本当に休みたいなら、就業規則を確かめたうえで有給を申請する。この線引きを覚えておけば十分です。AI生成の写真がどこまで日常に入り込んでいるかは、レストランのメニュー写真を扱ったエッセイも参考になります。

Sources

  1. X マーダン=浪(@tagyoulaw_0716)の投稿「仮病使うために今これ」(2025-10-16) (2026-10-23確認)(新しいタブで開きます)
  2. ねとらぼ「熱を測ると36.7度→ChatGPTに“加工”を頼んだら……「!!!!」 何も信じられなくなる“衝撃の1枚”が1500万表示」(2025-11-03、よーちゃん) (2026-10-23確認)(新しいタブで開きます)
  3. X ねとらぼ(@itm_nlab)の記事告知(2025-11-06) (2026-10-23確認)(新しいタブで開きます)
  4. Togetter「「やばい、5時間考えた作戦が詰んだ」仕事を休みたくて、ChatGPTに体温計の36.9℃を38.4℃に加工するよう頼んだら、「虚偽の証明に使用されるおそれがある」と断られた」(2025-11-11) (2026-10-23確認)(新しいタブで開きます)
  5. OpenAI「Usage policies」(2026-11-20発効版と改定履歴) (2026-10-23確認)(新しいタブで開きます)
  6. OpenAI「Usage policies」(2025-01-29発効版、Internet Archive 2025-09-14保存) (2026-10-23確認)(新しいタブで開きます)
  7. OpenAI「Usage policies」(2025-10-29版) (2026-10-23確認)(新しいタブで開きます)
  8. OpenAI「Advancing content provenance for a safer, more transparent AI ecosystem」(2026-05-19、2026-07-31・2026-10-05追記) (2026-10-23確認)(新しいタブで開きます)
  9. OpenAI Help Center「Provenance signals in OpenAI-generated content」 (2026-10-23確認)(新しいタブで開きます)
  10. OpenAI「Verify OpenAI-generated content」 (2026-10-23確認)(新しいタブで開きます)
  11. OpenAI Help Center「ChatGPT — Release Notes」(2025-12-16、2026-04-21、2026-09-08の項目) (2026-10-23確認)(新しいタブで開きます)
  12. 福岡県「年次有給休暇を活用しましょう」(2025-10-21更新) (2026-10-23確認)(新しいタブで開きます)
  13. 福島県「個別Q&A8-(2)年次有給休暇がもらえない」(2019-03-29更新) (2026-10-23確認)(新しいタブで開きます)

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