先日、米国政府内で進行していた極秘のAI導入計画「AI.gov」の詳細が、なんとGitHubに一時的に公開され、テック業界に波紋を呼んでいます。この計画は、2025年時点で再び大統領職に就いたドナルド・トランプ政権によるもので、連邦政府全体にAIを組み込み、行政の在り方を一変させることを目的としています

GitHub上に短時間だけ出現したこのプロジェクトの痕跡を、AIbase編集部が奇跡的にバックアップから復元。その詳細をもとに、今ここで私たちは「AI政府」計画の核心を、忠実かつ徹底的に紐解いていきます。


突然現れた「AI.gov」のコードベース

2025年6月、GitHub上に突如現れた「AI.gov」という名前のリポジトリ。開発元は米国総務管理局(GSA:General Services Administration)および、その技術部門である技術転換サービス(TTS:Technology Transformation Services)であることが明記されていました。

しかし、このリポジトリは公開からわずか数時間で削除。AIbaseの調査チームは、その間に全ファイルをバックアップし、計画の骨子を把握することに成功しました。この偶発的なリークが、今やAI政策史に残る重大な「スクープ」となっています


GSAが目指す「AI主導政府」の輪郭

TTSを率いるトーマス・シェッド(Thomas Shedd)局長は、今年1月に就任して以来、「AIこそが政府の未来」と明言。彼が打ち出したのは、まさにスタートアップ的思考で動くGSAの実現、そして**「AIファーストな全政府」戦略**の導入でした。

この戦略の中核に据えられているのが「AI.gov」プロジェクトです。行政に関わる無数の作業をAIによって自動化し、官僚機構の効率を徹底的に見直すことが目的とされています。


AI.govの三本柱──チャットボット、API、CONSOLE

「AI.gov」は、以下の三つの主要機能を軸に構成されています。

まず一つ目は、政府専用のチャットボット。これは行政職員や国民とのやり取りを効率化するためのもので、各種問い合わせ対応、業務補助、タスクの割り当てなどをAIが自動的に処理します。

二つ目は、「全能API(Omni API)」と呼ばれるツール。これは、各政府機関が持つ業務システムを、OpenAI、Google、Anthropicといった外部のAIモデルに接続するインターフェースとなります。まさに官民連携の象徴とも言えるこの設計により、政府は最先端の生成AIを業務に統合できる体制を整えようとしています。

そして三つ目は、「CONSOLE」と名付けられたモニタリングツールです。これにより、各機関のAI使用状況がリアルタイムで可視化され、職員がどのAIツールを使っているか、どのような用途で活用されているかを一目で把握できます。

これらのツールは、政府全体の業務効率を飛躍的に高めるだけでなく、意思決定のスピードや正確性をも向上させることが期待されています。


Amazon Bedrock経由のAIモデル導入

プロジェクトのインフラ面にも注目すべき点があります。GitHubに記載されていたAPIドキュメントによれば、AIモデルはAmazon Bedrockを通じて提供される構成となっており、CohereというAIスタートアップもその一翼を担っていました。

ただし、Cohereは連邦政府のクラウド認証制度「FedRAMP」をまだ取得していないことが判明しており、この点については安全保障やデータ保護の観点から、専門家たちの間で議論が分かれています。


AI活用の影に潜むリスクと懸念

この壮大な構想の裏で、多くの懸念の声が上がっているのも事実です。特に顕著なのが、AIが公的機関で市民の個人情報や機密情報を扱うことに対するセキュリティリスクです。

一部の専門家は、「技術的に可能であっても、それが倫理的かつ社会的に正しいとは限らない」と警鐘を鳴らしています。AIによる判断が透明性を欠き、不適切なバイアスや誤認識が行政判断に影響を及ぼす可能性も指摘されています。

さらに、AIに置き換えられる業務が拡大することで、公務員の雇用不安も無視できない社会的問題となって浮かび上がってきます。


沈黙する関係者、閉鎖されたコードベース

我々AIbase編集部は、TTSの関係者やトーマス・シェッド局長に対して複数回の取材依頼を行いました。しかし、取材への回答はなく、その直後にGitHub上の「AI.gov」リポジトリが完全に削除されてしまいました。

この対応は、プロジェクトの正当性や透明性に関して、多くの疑問を残す結果となりました。公開された情報が真実であるほど、その沈黙が深い意味を持つように感じられます


総括:AI政府はユートピアか、それともディストピアか

今回明らかになった「AI.gov」プロジェクトは、まさに**「未来の政府」の縮図**とも言えます。AIを国家運営に本格的に組み込むという大胆な構想は、効率化や生産性向上という観点では極めて理にかなっています。

しかし同時に、情報の非対称性、監視社会の懸念、民主的プロセスの形骸化といった暗部も否応なく浮かび上がります。

トランプ政権がこのまま計画を進めるのか、それともこのリークを機に方向転換を図るのか。AIと行政が交差する未来は、今まさにその第一歩を踏み出したばかりです。