AIは無機質で感情のない存在だ——そんな時代はもう終わりかもしれません。2025年7月、OpenAIはついにChatGPTに“個性(Personas)”という新機能を追加し、AIとの対話に新たな息吹を吹き込むことに成功しました。
これまでのChatGPTといえば、「情報に強いが少し味気ない」、そんな印象を抱いた方も多いのではないでしょうか。しかし、今回発表された新機能によって、そのイメージが大きく塗り替えられようとしています。
「個性」ってなに?ChatGPTの“中の人”が変わる新時代へ
この新機能「個性」は、ChatGPTの対話スタイルをユーザーが自由に選択できるという革新的なものです。つまり、従来の一様な受け答えスタイルに加え、まるで異なる“人格”を持つ複数のChatGPTを状況に応じて切り替えることができるのです。
OpenAIはこれを「ユーザーとの対話体験をより深く、より人間らしくするための進化」と位置づけています。単に質問に答えるだけのAIから、共感し、皮肉り、諭し、語りかけてくるAIへ——それが今回のアップデートの核心です。
選べる4つの「個性」―あなたに合ったAIはどれ?
現時点で提供されている個性は、以下の4タイプ。それぞれが明確なキャラクター性を持っており、使うシーンによって相性が大きく変わってきそうです。
まずは、「愤世嫉俗者(シニカル)」。このスタイルは、すべてのことに対して皮肉と批判の目を持つ、まさに毒舌系AI。無条件で肯定するのではなく、時に辛辣に、しかし的確に物事の裏側を突いてくるのが特徴です。思考を深めたい、逆説的な視点を得たいときにぴったりでしょう。
続いて、「机器人(ロボット)」。その名の通り、必要最小限の言葉で情報を端的に伝える“ドライなAI”です。感情的なやり取りを省き、スピーディかつ無駄のない返答を求めるビジネスユースや開発環境などに理想的です。
そして、「倾听者(リスナー)」。この個性は、優しく、共感的で、まるでカウンセラーのように寄り添ってくれるスタイル。悩み相談や気持ちの整理など、心のケアが必要なときに大きな力になってくれそうです。
最後に紹介するのは、「智者(賢者)」。情熱的で知識豊富、そしてちょっとお節介なところもある“賢い親友”のような存在。議論や勉強、探求の伴走者としては、これ以上ないパートナーになるかもしれません。
どうやって使う?設定は簡単、でもまだ限定公開中
この機能を利用するには、ChatGPTのWebアプリ上で「プロフィールアイコン」→「ChatGPTのカスタマイズ」という順に設定画面に進むだけ。そこから自分に合った個性を選び、反映させることができます。
ただし、注意点もあります。本機能は現在、段階的にグローバル展開中のため、すべてのユーザーがすぐに利用できるわけではありません。あなたのアカウントにこの機能が表示されていない場合は、少し待つ必要があります。
なぜ今“個性”なのか?ライバルとの競争、そして次のステージへ
このアップデートの背景には、明確な競争環境があります。OpenAIのChatGPTは、技術的な完成度ではトップクラスですが、ユーザー体験の「人間味」においては、MicrosoftのCopilotに一歩先を越されていたという側面がありました。
CopilotはWindowsとの統合性に加え、より親しみやすくパーソナライズされたUI/UXを提供しており、多くのユーザーから“使いやすいAI”として評価されています。OpenAIがこの個性機能に踏み切った背景には、競合との差別化と再ポジショニングへの強い意欲があると見て間違いありません。
AIが日常に浸透し、パートナーのような存在になりつつある今、「どんな性格のAIと付き合うか」は、重要な選択肢になりつつあるのです。
今後に期待したい進化―個性のカスタマイズはどこまで可能に?
現段階では、個性の選択肢は固定されたプリセット形式ですが、将来的にはユーザー自身が個性を細かくカスタマイズできる可能性も示唆されています。
たとえば、返答の口調、ユーモアの有無、知識レベル、話し方のスピードや使う語彙のレベルなどをスライダーや設定項目で微調整できるようになれば、より“自分だけのAI”に仕立てることができるでしょう。
これはつまり、ChatGPTがツールから“パートナー”に変わる瞬間とも言えるでしょう。もはや単なる対話エンジンではなく、人格を持った存在とのコミュニケーション。その一歩が、今回のアップデートによって始まったのです。
結びに:AIとの関係は“選ぶ時代”へ
AIは、人類の知性を補完する存在として急速に進化しています。そして今、その知性に「人格」が加わることで、AIとの関係性にも新たな可能性が生まれようとしています。
ChatGPTの「個性」機能は、単なる見た目や口調の違いではありません。人間とAIの間に、より深い関係性を築くための扉を開くものなのです。
あなたはどんなChatGPTと話したいですか?
ロボットのように冷静沈着なパートナー?それとも、皮肉屋だけど賢い相棒?あるいは、悩みに寄り添ってくれる聞き上手なカウンセラー?
AIとの関係は、これからは「選ぶ時代」へ。
新しいChatGPTの世界を、ぜひ一度体験してみてください。