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Featureシリーズ: After the Hype

BALMUDA Phoneの約5年:発売から修理受付の終了まで、会社の発表でたどる

電卓アプリから為替の換算が消えた日、ひとつのスマホの物語に区切りがつきました。売上、損失、終了の理由を、会社が自ら書いた数字と言葉で振り返ります。

Modern-G 編集部約5分で読めます
角のない小石のようなスマートフォンの輪郭が横たわり、その上で小さなカレンダーの最後のマスにだけ印がついている、抽象的なイラスト
イラスト:Modern-G

2026年10月1日、BALMUDA Phoneの「計算機」アプリから、為替の換算と音声入力が使えなくなりました。「スケジューラ」と「時間と天気」の天気表示も止まっています。前日の9月30日で、バルミューダはこのスマホの修理受付とサポート受付、関連サービスを終えました。7月の告知は「これまでBALMUDA Phoneをご愛用いただき、誠にありがとうございました」と結ばれています。

発売から4年10か月。デザイン家電の会社が作ったスマホは、発表直後に評価が大きく割れたことで記憶されています。ここでは評判をなぞらず、会社が自ら開示した日付と数字で、その時間をたどります。

年表:参入から、最後の受付まで

時期出来事
2021年5月携帯端末事業への参入を決定
2021年11月16日BALMUDA Phoneを発表、26日に発売。国内の通信会社ではソフトバンクだけが扱い、SIMフリー版の直販価格は104,800円
2022年1月販売を一時停止。「一部の周波数帯域で干渉ノイズが許容値を超える可能性」が判明したとして、14日にソフトウェア更新を配信し販売を再開
2022年3月10日SIMフリー版を78,000円に値下げ
2022年9〜10月Android 12への更新を提供。グッドデザイン賞を受賞
2023年5月12日携帯端末事業の終了を決定し、特別損失を計上
2023年11月定期的なセキュリティアップデートを終了
2024年9月30日直販での販売を終了(ソフトバンク版などは在庫がなくなりしだい終了)
2026年9月30日修理・サポートの受付と関連サービスを終了

製造のパートナーは京セラでした。2022年1月の販売停止は「技術適合証明の認証に確認すべき事項が発生した」という説明で始まり、数日後に対処の内容が公表されています。

売上は、1年で3割に

2023年5月12日の適時開示に、携帯端末の売上が載っています。同社は家電だけの単一セグメントのため、製品カテゴリーとしての売上高だけを開示しました。

  • 2021年12月期:28億4,700万円(連結売上高の15.5%)
  • 2022年12月期:8億6,800万円(同4.9%)

発売の11月26日から決算期末までは5週間ほどしかありません。その短い期のほうが売上は大きく、丸1年あった翌期はその3割ほどにとどまりました。ただ、この数字が通信会社や販売店への出荷によるものか、利用者への販売によるものかは、開示からはわかりません。販売台数も公表されていません。

事業の終了に伴い、同社は固定資産の減損損失2億9,300万円を含む5億3,600万円を、事業整理損として特別損失に計上しています。

会社が挙げた理由

開示によると、バルミューダは2台目以降の端末も開発していました。ところが「当初開発を進めていた次期モデルは原材料価格の高騰と急激な円安の進行により昨年後半に開発続行が困難になり」、別のモデルも「同様に為替等の様々な条件が整わず」、開発を中止します。そのうえで、経営資源は既存の家電と新しい商品ジャンルに集中すべきだと判断した、と説明しています。

開示が使っている言葉は「事業の終了」と「開発の中止」です。この記事もそれ以上の言葉は使いません。

家電の時計と、スマホの時計

寺尾玄社長は、2022年2月の決算説明会でこう語っています。「家電業界とはスピード感が全く違うため、早く慣れなければと感じている」。発売前から始まったネット上の逆風も「全く想定していなかった」と振り返りました(FASHIONSNAPの記事による)。

この「スピード感」は、同社の別の発表と並べると輪郭がはっきりします。2026年9月29日、バルミューダは看板商品のトースターを「11年目にして初のフルリニューアル」として発売しました。一つの製品を10年売り続けられる家電と、毎年のように新機種が出るスマホでは、時計の進み方が違います。

部材高と円安への備えも、家電には別の手がありました。同じ2022年2月の説明会で、同社は原価の高騰を背景に家電の値上げを計画していると明かしています。家電Watchが伝えた寺尾社長の説明では、同社にとって初めての値上げでした。長く売る製品なら、値上げや改良で一時の逆風を吸収できます。次の端末を間を空けずに出し続けなければならない商売では、その余裕がありません。次期モデルが2022年後半に行き詰まったのは、この時間の違いが表に出た結果だった、と編集部は見ています。開示が直接そう書いているわけではありません。

その後のバルミューダ

2023年の告知で、同社は「今後もインターネットテクノロジー関連の研究開発を積極的に進めてまいります」と書きました。2026年10月27日には、同社初のコンテンツサービスとして、時計「The Clock」向けのパーソナルAIラジオのβ版を発表しています。スマホで得た知見がどこに生きているのかを、会社は具体的には語っていません。

手元にある人へ

10月1日以降も、端末の基本機能や、サービス連携を必要としないアプリ機能は使える場合がある、と同社は案内しています。ただし動作の保証やサポートはありません。定期的なセキュリティアップデートは2023年11月に終わっています。更新の止まった端末をどこまで使うかの考え方は、スマホの更新期限と買い替えの目安で整理しています。

データの扱いにも注意がいります。同社のQ&Aによれば、スケジューラの予定は連携したGoogleかMicrosoftのアカウントにひもづいているので、同じアカウントでログインすれば別の端末に移ります。一方、メモアプリのデータはGoogleドライブにバックアップできても、BALMUDA Phoneのメモアプリ以外には戻せません。残したいメモは、端末が動くうちに本文を別のアプリへ写しておくのが確実です。

Sources

  1. バルミューダ 適時開示「携帯端末事業の終了決定並びに特別損失の計上について」2023年5月12日(PDF)(2026年10月29日確認)(新しいタブで開きます)
  2. バルミューダ テクノロジーズ「【携帯端末事業に関するお知らせ】」2023年5月12日(2026年10月29日確認)(新しいタブで開きます)
  3. バルミューダ テクノロジーズ「携帯端末事業に関するお知らせ」Q&A(2024年10月1日更新版、Internet Archive 2025年1月22日取得)(2026年10月29日確認)(新しいタブで開きます)
  4. バルミューダ テクノロジーズ「BALMUDA Phone販売終了に関するお知らせ」2024年9月2日(2026年10月29日確認)(新しいタブで開きます)
  5. バルミューダ「BALMUDA Phoneおよび関連アプリのサポート、アクセサリの販売終了のお知らせ」2026年7月17日(2026年10月29日確認)(新しいタブで開きます)
  6. バルミューダ「BALMUDA Phoneのソフトウェア更新のお願いとお知らせ」2022年1月13日(2026年10月29日確認)(新しいタブで開きます)
  7. バルミューダ テクノロジーズ「BALMUDA Phone、Android 12対応を含むソフトウェアアップデートの提供開始」2022年9月8日(2026年10月29日確認)(新しいタブで開きます)
  8. バルミューダ テクノロジーズ「2022年度グッドデザイン賞を受賞」2022年10月7日(2026年10月29日確認)(新しいタブで開きます)
  9. バルミューダ「11年目にして初のフルリニューアル『BALMUDA The Toaster』」2026年9月29日(2026年10月29日確認)(新しいタブで開きます)
  10. バルミューダ「パーソナルAIラジオ『BALMUDA Good Morning Radio』β版の提供を開始」2026年10月27日(2026年10月29日確認)(新しいタブで開きます)
  11. ソフトバンク「BALMUDA Phone」サポート(修理受付終了予定日)(2026年10月29日確認)(新しいタブで開きます)
  12. 家電Watch「バルミューダの5Gスマホ発表。カメラは料理がおいしそうに写る」2021年11月16日(2026年10月29日確認)(新しいタブで開きます)
  13. ケータイWatch「バルミューダの『BALMUDA Phone』販売停止、“技術適合証明の認証に確認すべき事項”」2022年1月9日(2026年10月29日確認)(新しいタブで開きます)
  14. 家電Watch「バルミューダの5Gスマホが14日から販売再開」2022年1月13日(2026年10月29日確認)(新しいタブで開きます)
  15. 家電Watch「バルミューダ売上高は過去最高更新するも、初の家電値上げへ」2022年2月(2026年10月29日確認)(新しいタブで開きます)
  16. 家電Watch「バルミューダのスマホが値下げ、SIMフリー版を7万円台に」2022年3月10日(2026年10月29日確認)(新しいタブで開きます)
  17. FASHIONSNAP「バルミューダ寺尾社長『ネット上での逆風は全く想定していなかった』」2022年2月12日(2026年10月29日確認)(新しいタブで開きます)
  18. 家電Watch「バルミューダ、スマホ事業を終了」2023年5月12日(2026年10月29日確認)(新しいタブで開きます)

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