音楽制作の現場では、ポータビリティと機能性を両立させるツールが常に求められています。そんなニーズに応えるべく誕生したのが、teenage engineering が開発した OP-XY です。この製品は、同社の人気モデルである OP–Z のワークフローを基盤に、さらに進化した「妥協のない」デザインと性能を備えたシーケンサーで、サンプラーやパフォーマンスインストゥルメントとしての機能も一体化しています。
OP-XY は、単なる音楽制作ツールを超え、ユーザーが「ずっと夢見ていた」創作体験を提供することを目指しています。内蔵された CV(コントロール電圧)端子、エフェクトセンド機能、クラス最高クラスの DAC(デジタル・アナログ・コンバーター)により、外部シンセサイザーやモジュラーシステムも自在にコントロールできます。独立した 8 つのインストゥルメントトラックに加え、8 つの AUX トラックを搭載してエフェクトを追加することも可能で、「史上最も完成されたポータブルシーケンサー」と呼ぶのも過言ではない仕上がりとなっています。
さらに、OP-XY は VGP2025 lifestyle 賞を受賞するなど、業界からの高い評価も得ています。外装はブラックで統一され、同社の OP-1 field と同じ寸法で設計されており、持ち運びやすさとデザインの統一感を両立させています。本体中央にはグレースケールのグラデーションが施され、本格的なシーケンス機能に特化した製品であることを視覚的に伝えています。高解像度ディスプレイのグラフィックはグレースケールで表現され、録音やパラメータロックの状態は鮮やかな赤色で表示されるため、操作時の視認性も確保されています。重要なキーには全て LED が搭載され、暗いスタジオ環境やライブ会場でもスムーズな操作が可能です。
OP-XY の特徴
OP-XY の最大の魅力は、その豊富な機能と高度なシーケンス性能です。まず、シーケンサー機能に注目すると、超高速なワークフローを実現しています。独自のpunch-in FX™ が搭載されており、これによりライブ感のある独自のバリエーションを素早く追加できるほか、個別のステップコンポーネントを加えることで、リズムにさらなる奥行きと変化を生み出すことができます。ノートタイミング、ベロシティ(音の強弱)、ピッチのランダマイズなど、ライブオートメーションでフィルターをリアルタイムに変化させることも可能で、音楽のダイナミズムを自由にコントロールできます。
さらに、brain™ という機能が搭載されており、これを使ってコード進行を作成すると、文字通り自動で自己変化するトラックを生成できます。未知のコード進行の転調や生成にも対応しているため、いつもと異なる新しいサウンドを手に入れたい場合に非常に役立ちます。例えば、これまで慣れ親しんだポップスのコード進行から脱却し、ジャズ調の意外な展開を試したいとき、brain™がそのアイデアを具現化してくれるのです。
OP-XY には加速度センサーとピッチベンドも搭載されています。加速度センサーを活用すると、本体を傾けたり回転させたりするだけでモジュレーションを加えたり、punch-in FX™の効果を変更したりできます。ピッチベンドは圧力感知式で、本体の左下に配置されており、指の押す力に応じてピッチを微妙に調整できるため、より表現力豊かな演奏が可能になります。
次に、多彩なサウンド生成機能も OP-XY の大きな特徴の一つです。8 種類のユニークなシンセエンジンを搭載しており、それぞれが異なる音質と表現を実現しています。例えば「monium」は、オルガンとサンプラーを中心に構成されたエンジンで、広がりのあるパッド音、心のこもったゴスペルコード、重厚なベース音など、多様なサウンドを生成でき、必要なコントロールも全て備えています。「curio」はロシアの 80 年代スペースディスコ風の重低音ベースやリード音を自在に操ることができ、「entropie」はリズミカルなノイズトラックを生成し、再生するたびに異なる表情を見せてくれます。
新たなドラムサンプラー、マルチサンプラー、シンセサンプラーも搭載されており、「ask why」というサンプラーはクリアさが際立ち、お気に入りのシンセやドラム、その他のサウンドをほぼ完璧な精度でサンプリングできます。「pulse」は複数のドラムサンプラーを組み合わせることができ、OP-XY の素早いアレンジ能力を最大限に引き出せるエンジンです。「goinis」はウェーブテーブルエンジンを採用し、倍音を自由に変化させることができ、加速度センサーと連動させて本体を持ち上げたり回転させたりすることで、トラックのフェードイン / アウトも同時に行えます。
エフェクト機能も充実しており、6 種類の内蔵エフェクト(リバーブ、ディレイ、コーラス、ディストーション、ローファイ、ハザー)を搭載しています。さらに、マスター EQ、マスターサチュレーター、マスターコンプレッサーとリミッターも備えており、最終的なサウンドの調整を細かく行えます。ステレオ信号経路を採用しているため、広がりのあるサウンドを再現することも可能です。
ステップシーケンス機能は OP-XY のコア性能の一つで、各トラックが独立して異なる速度と長さで再生できるため、強力なポリリズムを形成することができます。14 種類のステップコンポーネントを搭載しており、これを使って毎回新しいシーケンスを作成し、シーケンサーの任意のステップに追加できます。
例えば「pulse」はシーケンスを進めずにステップを設定した回数だけ繰り返し、「hold」はシーケンスを進めずに設定した回数だけステップを保持します。「multiply」はステップ内のトリガー数を増やしてラチェット効果を生み出し、ハイハットのリズムを豊かにするのに最適です。「velocity」ではステップごとにベロシティの値を調整でき、「ramp up」と「ramp down」は設定したスケールに従って音を上げたり下げたりする傾斜を作り出します。
「random」は設定したスケール内で音をランダマイズし、「portamento」はステップへのポルタメント効果(音程の滑り)を適用します。「bend」はピッチベンド効果を加え、さまざまなベンドパターンでクリエイティブな音を楽しめます。「tonality」はステップを固定された間隔で移調し、「jump」は任意のステップからステップへスキップさせます。「skip parameter lock」「skip step component」「skip trigger」は、指定した回数の繰り返しごとに特定の機能を再生またはスキップさせることができ、シーケンスに周期性のあるバリエーションを加えるのに役立ちます。これらのステップコンポーネントは、ステップごとに最大 14 個まで適用可能で、無限に近いバリエーションのシーケンスを作成できます。
OP-XY の接続性も非常に優れています。2 Vrms のメイン出力を搭載しており、どんなサウンドシステムでも大音量で駆動させることができます。マルチアウト端子には MIDI、CV/Gate、Sync、AUX Audio の機能が集約されており、外部機器とのシンクロナイズやコントロールを一元的に行えます。MIDI 入力とオーディオ入力も備えており、外部の MIDI コントローラーで操作したり、外部音声を処理してサンプリングしたりすることができます。
USB-C 端子はオーディオ / MIDI ホストおよびデバイスとして機能し、コンピューターとの接続で制御、録音、充電を行えます。さらにBluetooth LE MIDIをサポートしており、有線の制約を受けることなく完全なワイヤレス体験が楽しめます。内蔵スピーカーと内蔵マイクも搭載されており、外部機器がなくても簡単にサウンドの確認やサンプリングを行えます。
操作インターフェースも使いやすさを重視して設計されています。2 オクターブのキーボード、68 個のウルトラ・ロー・プロファイルの機械式ボタン、4 つの多目的グレースケール・エンコーダーを備えており、直感的に操作できます。80 x 222px の IPS TFT ディスプレイは高解像度で、各種設定やシーケンスの状態を明確に表示します。
その他の機能として、24 ボイスのマルチティンバルシンセシス、各トラックにプレイヤー、瞬時サンプリング、シーケンス可能な 2 つの内蔵 FX スロット、トラックごとに選択可能な MIDI チャンネル、10,000 以上のプロジェクトファイルとバージョン履歴の保存機能などがあります。16 トラック、64 ステップのシーケンサー(4 ページ構成)を搭載し、1 トラックあたり最大 9 パターン、1 パターンあたり最大 64 小節(4 ページに分割)を収録可能で、パターンごとにプリセットを保存することもできます。プロジェクトごとに 9 曲までのソングモードに対応し、創造的なスウィング用に 10 種類のグルーヴを用意しています。
1920 PPQN(pulses per quarter note) の高分解能タイミング制御を実現しており、精密なリズムを再現できます。滑らかなパラメーターロック機能、マイクロトーナルチューニング(微分音チューニング)、パフォーマンス用のジャイロスコープも搭載されており、より高度な音楽表現が可能になります。バッテリー駆動時間は最大 16 時間と長時間の使用に耐え、アルバム制作からライブパフォーマンスまで、どのようなシーンでも活躍します。
まとめ
OP-XY は、ポータブルシーケンサーの可能性を再定義した製品です。OP–Z の優れたワークフローを継承しつつ、デュアル CPU 搭載による高性能化、完全に再構築されたシーケンサー、豊富なサンプラー機能、多様な接続オプションなど、音楽制作に必要な要素を高度に統合しています。
その特徴的なデザインはミニマルさと機能性を両立させ、高い視認性と使いやすさを実現しています。8 種類のユニークなシンセエンジンや 14 種類のステップコンポーネントを活用することで、ユーザーは無限に近いバリエーションのサウンドとシーケンスを創り出すことができます。brain™機能や加速度センサー、Bluetooth LE MIDI などの先進的な機能も、創作の幅を大幅に広げてくれます。
16 時間の長時間バッテリー駆動と充実した入出力端子により、スタジオでの制作はもちろん、ライブ会場での即興演奏や外出先でのインスピレーションをキャッチするシーンでも、OP-XY はユーザーの創造性を最大限に引き出します。無償のファームウェアアップデートによる機能拡張も期待でき、長期的に愛用できる投資価値の高い製品と言えるでしょう。
音楽制作における「自由」と「可能性」を追求する人にとって、OP-XY は単なるツールではなく、創作のパートナーとして役立つでしょう。VGP2025 lifestyle 賞を受賞したことも、その優れた品質と革新的な機能が業界から認められた証であり、音楽愛好者やプロデューサーにとって、ぜひ検討すべき製品の一つと言えます。